人生、東奔西走

自分の人生の備忘録のつもりで作りました。

ちょっと兼末健次郎の話していい?(後編)

keepbeats.hatenablog.com

 

昨日の記事の続きです。

ブルアカの美園ミカをきっかけに金八先生の生徒、兼末健次郎に思いを馳せる。

本日は兼末健次郎更生編です。

 

クラスの裏皇帝として君臨していた兼末健次郎も、金八先生が3Bの担任になってから3ヶ月ほどで金八教師人生を賭けた体罰によってとうとう健次郎の立場は陥落したわけです。

その続きの話。

 

そもそも兼末健次郎がこんなにもねじ曲がった性根になってしまった家庭の問題、引きこもりの兄を秘匿しながらの生活、両親からの愛情の欠如。ここらへんの問題を片付けに、俺たちの金八っあんが動きます。

 

ちょっとこの辺り、ストーリーの順番が曖昧だったので、感想まとめているファンサイトを見て確認させてもらっています。

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正直この頃の健次郎は、もうかなり参っている状態だったわけですが、それでも私立高校、現実世界での開成高校に相当する開栄高校に合格するなどハチャメチャな優秀っぷりを発揮しています。親の期待に応えようと結果はしっかり残す、どこまでも健気なやつでもあるんです。

 

ところでハーバートに留学に行っていることになっているはずの健次郎兄・雄一郎は、引きこもりと言いながら、夜な夜な何事か雄叫びを上げたりしながら、ジャージにキャップで周囲を走り回るということをやっていたんですね。咆哮の彷徨ですな。シリーズおなじみの大森巡査からは怪物などと呼ばれていた有名不審者だったのですが、ある日とうとうこの怪物を巡査が追い詰めてとっ捕まえることになります。

とっ捕まえるときに車を避けようとして巡査と激突するとかなんとかいろいろあって、ともかく兄は病院に搬送されることに。その知らせを聞いた両親は病院に向かって、1人家に取り残される健次郎。

 

そこにかかってくる電話。健次郎が出ると、金八先生からの電話だったわけです。

すると、家の近くを通っているパトカーだか消防車だかのサイレンが受話器の向こうからも同じように聞こえるわけです。そこでハッとした健次郎が家の外を見ると、金八先生が家の前から携帯電話で健次郎宅にかけていたのですね。その姿を見た健次郎はたまらず家を飛び出して、「先生…!」とすがりついて号泣するというシーン。

これまで小憎らしい悪党面をふんだんに披露してきた健次郎ですが、このあたりの健次郎は本当に年相応の、しかも不憫な少年という様相です。ちなみにこの回のタイトル「ガラスの少年」という。いつ割れても不思議ではない…。

(ちなみに金八先生が健次郎宅にちょうどいいタイミングで出向いて電話をしていたのは偶然ではなくて、兄が病院に搬送される手前のしっちゃかめっちゃかで、兄をハネそうになった軽トラを運転していたのが第2シリーズの卒業生。地元でスーパーを営んでいるその卒業生が、金八先生に「健次郎の兄貴が…」と事情を報告して、すべてを察した金八っつあんが兼末宅に突撃したというもの。

これに限らず、こういう地元コミュニティのお節介は基本的にすべていい方向にことを運ぶし、良いものとして描かれているのも金八シリーズの特徴)

 

ここで先生を家に上げて、兄の部屋なんかを見せながら事情をすべて説明する。

ゴキブリなんかが平気で映っていたこともあった部屋の惨状に絶句していると、両親帰宅。健次郎が先生に事情を説明したことを責めながらも、ことこういう事態になると生徒を守るためには親ともばちばちやり合う金八っつあんがブチギレ。

「あなた方は自分のキレイなスーツや手を汚したくないから、健次郎に向かって「お兄ちゃんを助けなさい!お兄ちゃんを助けなさい!」と言っておられる。」「一体15歳の子どもに、いつまで親が甘えているんですか!!」と。

健次郎は自分では両親への愛情もあるから、親に頼まれたら断れない兄貴の世話。それを初めて「親の仕事だろ!」「子どもに甘えるな!」と言ってもらったのは救いだったろうね…。

ただそれでも家から帰る金八先生は「泥に塗れた子ですが、健気ないい子です。どうか愛してやってください。愛してやってください」と言葉を残して帰るんですよね。

物語当初では本当にずる賢い悪党だった健次郎ですが、このあたりになってくると視聴者は健次郎の家庭の事情も知っているし、感情移入もしてます。健気な子であるということはようわかっている。「よう言うた!坂本先生!」の心境。

 

金八先生に事情が明らかになったことで、いろいろ好転するだろう。ここが底。

…かと思いきや、そうは問屋がおろさなくて…。

 

まず第一にせっかく合格した開栄高校ですが、母が兄のことにばかり気をかけていたために入学手続きを失念してして入学取り消しになります。これ開栄にせっかく…ではなくて、この段になっても母が兄しか見てないのが健次郎にダメージなんですよ。まず、と言えるほどではない悲劇だとも思うんですが…。さらに畳み掛けるように…。

兄は兄で復調の兆しを見せていて、金八先生にも「新聞配達でもなんでもやってとにかく1人で生活しようと思う」とそういうことを言っていたりします。

ただ、その兄の独り立ちを受け入れられない母。とうとう母と兄が揉み合いの口論になり、健次郎が止めに入るも、母が錯乱して持ち出した包丁を奪おうとした際に健次郎が母を刺す形になります。

…いや、もうやめてくれ…。書いてても、健次郎が何したってんだ…と。

 

その後、健次郎の罪を被ろうと「俺が刺した」の書き置きを残して消えた兄。兄が死ぬつもりであると思った健次郎も急いで追っかけて、結果二人は警察から追われることに。

ほんっとにさあ!このあたりで周りの大人の初動はどうなってんだよ!本当によお!

健次郎と兄は合流するんですが、弟の罪を庇うために健次郎を気絶させて警察に突撃していく兄。金八先生に発見された健次郎は、このあと先生に連れられてパトカーに乗り込むわけなんですが。このあたりで流れるアメージング・グレースがね…。なんとももう…。

金八シリーズは生徒が警察に連行されるときに名曲流しがち。世情もJupiterもそう。

 

ことここに至りて、とうとう母を刺して警察に連れて行かれるということになった健次郎。たしかに悪ガキだったがここまでのことはしていない…。

そもそも学級においてはあんまり同情の余地のない健次郎だけど、こと家庭においては100:0くらいで被害者だろう健次郎。最後の最後だけ加害者になって捕まることはないだろうに…。

 

ただ、もちろん故意にぶっ刺したわけではないので、事情をきちんと整理すれば健次郎が凶悪少年犯になるわけはないんですが…。事態をややこしくしたのが、母が頑な健次郎に刺されたのではなく転んで刺さったと主張していることだそうで。健次郎と母の間で証言の整合性がとれないと。

ここは大人の出番とばかり、健次郎父が家庭と向き合い始め妻に正直に話すよう説得し、金八先生も「今、もう一度お腹を痛めて健次郎を産み直したと思って」と諭すわけです。

で、そういういきさつもあってようやく健次郎が留置所を出られることになるんですが、このシーンが泣けるんだ。

担任の先生からといって、差し入れられたカツ丼。その直後に刑事の人がやってきて、「釈放が決まったよ、今すぐ出よう」とやってくる。ここで健次郎が「5分だけ待ってもらえないでしょうか」って言って、差し入れのカツ丼をかきこむんですよ。ここがもうねえ…俺こういう食べ物が絡む感動シーンに弱いんかもしれんね。

健次郎がようやく、人の好意だったり、愛情を受け止められるようになったんかなと。これまでも健次郎を気にかけてくれていた幼なじみの生徒だったり親友の生徒がいたりしたんですが、そういう人の気遣いだったり情を素直に受け入れることは出来なかった。そりゃそうですよね、一番見てほしい母親からの愛情が向けられてないんですから。

が、本当にいろいろな人の痛みを伴うここまでの道筋があって、健次郎はようやく人の情を受け入れることができるようになった。また、そういう人からの気持ちを思いやることができるようになったのだと。これは明確な成長として描かれる象徴的なシーンかなと思います。本当にこのシーン好きで。

 

そして、釈放された健次郎は、家庭裁判所の判決を待つ間、自宅待機になるわけですが、いくつかの禊を済ませていきます。

まず前3B担任であるラサール石井、中野先生への謝罪。金八先生を伴って中野先生の自宅を訪れて暴行事件と葬儀花差し入れ事件を謝罪。

実は中野先生側もこの間いろいろあって浄化が澄んでいるので、健次郎の謝罪を受け入れるんですが、このシーンに同席した中野先生の奥様が「あなた達のしたことは簡単に許せないけど」という旨のセリフが重くてね…。

そりゃそう。この奥様が教育者の世界にいるのかどうかはわからないですが、普通に自分の旦那がボコボコにされた上、精神的にも殺されそうになったんだから普通の人なら簡単に許せないですよ。相手が少年少女だったからの一点だけでは。

そういう意味では健次郎の悪事の向き先が、学校内で救われたのかもしれないってのは一つシビアな見方です。

でも周囲の大人の健次郎への優しさってのが染みるのもこのあたりのシーンなんですよね。大森巡査は家裁の判決が出るまでの見回りといって日夜健次郎の様子を見に来るのですが、顔見知りということもあって健次郎を気にかけているし。

また、健次郎の担当弁護士の方も家庭の事情も含めて、健次郎に同情的だった。

このあたり、大人が大人たる責任をもって、ここで健次郎が折れるようなことにしてはいけないという矜持が見えて好きなシーン群です。

 

もう一つ、健次郎の謝る先としては3Bの同級生があるのですが、こちらへの謝罪は最後の最後までもつれます。そりゃ健次郎が学校に行けないのだから…。

健次郎の家裁判決が卒業式の後になったため、卒業式への出席は叶わないことになります。ただ、特例として校長室での卒業証書授与を行ってくれることとなり、そこに出席するべく卒業式当日の桜中学に向かう健次郎。

で、本ちゃんの卒業式が終わって健次郎に卒業証書授与を行おうとしたとき、健次郎が「10分だけ、10分だけ待ってくれませんか!」といって3Bの教室に向かうわけです。

 

この3Bへの謝罪があるのかないのかについては、3B生徒からも「このまま卒業するのは納得できない」との声が上がっていたのですが、金八先生と「健次郎が自分で3Bに来るまで待とう」と抑えていたのです。まさに、健次郎の卒業直前のタイミング、健次郎が自分から向き合って言い出すことに意味があったんですね。

大人たちに良くしてもらって、いまここで特例の卒業証書授与式を終えれば、逃げ切ることはできる…が、健次郎はそれを良しとしなかったわけですね。健次郎~!おれは信じてたぞ…。

で、3B生徒を前にして謝罪の言葉を口にする健次郎。「もう許してるよ!」という3Bの同級生ね。最後の最後に思い残しなく卒業することが出来た3Bと健次郎でした…。

 

ちなみに、健次郎の卒業証書授与への出席について兼末家も出席しているのですが、ここに兼末家の問題も好転するだろうな…を思わせる顛末があるので書き残しておきますね。

まずお母さん。子に刺された母の話は校内には広まっているので、世間体を取り繕ってばかりのお母さんからしたら出席するのもつらかろう…なのですが、ここは針のむしろである覚悟をしても出席する決意を語っています。

朝、健次郎とお母さんが学校に出ようというタイミングで、お母さんが「それにしてもパパはこんなときも仕事って…」と不満を口にしながらも家を出ようとしていたときに、ちょうど家にやってくる人影が。

なんとまあビシッとスーツに身を包んだお兄ちゃんでありました。父さんに頼まれて、ということでしたが、お兄ちゃんとしても迷惑をかけた弟の門出を見送りたい意志があったのでしょう…。

あとお兄ちゃんとお父さんの間でそういうやりとりがあったということ事態が大きい。兄貴は引きこもり時代に説得を試みた父親を金属バットかなんかで血祭りにあげているので、この二人の間でまっとうなやり取りがあったというのも兼末家にとって大きい話なのです。

そして、極めつけにお父さん。仕事で来れないと言っておきながら、健次郎の卒業証書授与直前になんとか校長室に滑り込みセーフして、家族4人勢ぞろいという。

お父さんも家庭を顧みなかったことについて「しっかり稼いで、家族に不自由なく生活させることが夫・父としての務めと思っていた」との台詞もあって、要はこの人も愛情の向け方が下手っぴだったんですよね。

父については、家裁判決待ちの間健次郎と二人暮らしとなっていた時期に不器用ながらも親子のコミュニケーションをとろうとしていたシーンも有り、個人的にはまあこれからは大丈夫だろうな…と思っている1人です。

 

話が長くなりました…。

これにて、兼末健次郎をとりまく第5シリーズのあれこれと私が健次郎に対して語る感情はおしまいです。

人は人と人の間で人間となる…とは金八先生シリーズのどこかのセリフですが、人の心がわかんねえのかこいつは…という極悪非道だった生徒兼末健次郎が、人の心を学び1人の人間へとなる…正確に言えば、人間を取り戻すストーリーだったのかもしれません。

健次郎が最後の授業で金八先生からもらった言葉には「健という字は、ニンベンに建てると書きます。自分という人間を、しっかり地面に打ち建ててください。」

ようやく折れない一本の杭だか柱だかになれた健次郎のこれからに、青春の原っぱが広がっていることを祈って…。

 

 

 

 

今回、ことの発端の兼末家について、誰それが悪いということはあんまり思わないんですよね。全員が全員、同情しようと思えば同情すべき背景があります。それらが致命的に噛み合わずに破滅寸前までいってしまったという一つの家庭の話。

もし、健次郎が金八先生からの電話を受けても家の事情をひた隠しにしていたら…。そういう掛け違いがあればこの家庭は破滅していたかもしれないし、兼末健次郎は終わっていたかもしれませんが、これはそうはならなかった物語。

 

みなさんも、そんな物語を見てみませんか?今ならParaviで見放題です。私は今年のどこかのタイミングで加入すると思います。書いてたらちょっと見たくなってしまった、金八シリーズ。そしてそこで先生スピリッツを得てブルアカに持ち込もう…。

話がようやくブルアカに戻ってきたところで、この記事も終わりになりますね。

さて…あっちはあっちでキヴォトスが終わる終わらないの正念場のイベントが始まっているので、低レベルではありますがやれるところまでやりましょうか。それが先生のお仕事なので。

 

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