今日は少し早めに職場を出て家に帰り始めていました。
なにかしらを受講する必要があって、家のPCまでたどり着かないといけないという事情があったわけですね。まあ早く帰れるのはいいことだ。
しかし職場を出た途端暑さはとんでもなく、蒸すなあ…とうんざりしながら埼京線に乗り、西武池袋線へ。
西武池袋線は池袋始発の急行が結構混雑していたわけですが、これに乗らにゃ間に合わん。入れる車両を見つけて乗り込んだわけですが、後から後から人が入ってきて、ドア前程なくにいた自分は車両中程ロングシートの入り口付近まで押し流されていたわけです。
クソ暑い中での満員電車。うへぇ…と思いながらも右耳にイヤホンぶっ刺して適当な動画の音を聞きながら右手でつり革に掴まっていました。
程なく、背中にやたら人が動いているのを感じる。このクソ暑いのにジッとしてろと思っていると、いや違う、これ背面にいる人間が動いているのではない。なんかぶつかってきているな。どつかれている。
なんだぁ…テメェ…?と振り返ると、その行動の主が「おい」と。
なんだこいつは…?は正直な感想でしたが、こちらも空腹、暑さで相当にキている。「はぁ?」というようなリアクションをしていると、曰く「リュックを下ろせってんだよ!」と。
さて、私はこのときリュックサックを前に抱えて乗り込んでいました。背負ってはおりません。最初は何を言ってるんだこいつ、誰かと間違えてるんじゃないか?と思ってましたが。どうやら本当に俺らしい。
「俺はこうして足に挟んで地面に置いてる、そう持ったら前にスペース取るだろうが」とやけに高圧的に言われたんですね。いやぁ、この瞬間自分も相当にブチギレ寸前になって、その両胸ぐらを掴んで電車の外に引きずり出して蹴っ飛ばしてやろうかと思いました。これは比喩ではなくて、そういう欲望が自分の頭の中にリアルに浮かんできたという意味です。このクソ暑いタイミングで意味のわからんことをのたまうこの御仁を叩きのめしてやりたいと。
俺も腹の虫の居所が悪かったんでしょうね。「あぁ?」ぐらいは言っていたと思いますが。とはいえ、この電車を逃せない理由もある。ブチギレ権現になりそうなのをこらえて…。「…すみませんね!!」って言ってリュックサックを網棚に放り上げました。
仕事に必要なものも入っているリュックをこの混雑している電車の床に置くのは抵抗があった…というのは後付の理由です。言われた通りに床に置くのが癪だったわけです。後シンプルに満員電車で足の間にリュックを置くの、言うほど人に偉そうに言える手段か?
俺が内心にブチギレながら電車が動き出します。眉間のシワは過去一くらいで深くなっていたことでしょう。
発車後ほどなく流れる車内アナウンスで荷物についてのアナウンスがあり通路に置くと危険、前に抱えて持つか網棚をご利用くださいという趣旨の放送がありました。西武鉄道は俺の味方だ。
この一言を以て「おらぁ今の放送聞いたんかボケェ!」と胸倉掴んでやろうかとも思いましたが、動いている車内でそんなことをするのは危険だ。
さて、ここでこういうブチギレ案件のときの自分が何をするかという話なんですが。
ここまでキレてしまってはお気に入りの音楽とかASMRとかではおさまりがつきません。自分のキレについて客観視しようということを考えながら、私はある日の原さんの言葉を思い出していました。
あれは2014年~2015年にかけての何処かのイベントであったはずです。「怒りそうになった時には、『それって本当にそんなに怒るようなことなのかな』と数秒考えるようにしている」というもの。
ここまでのレベルで怒りが自分を支配したときには、この原さんの言葉を思い出すようにしているのです。今日ではこれは6秒ルールとしてアンガーマネジメントの手法にもなっているようですね。
ま、自分にとってはどこぞの自己啓発本で教えられたことではなくて、原さんが実体験として示してくれた教えであるということが、効き目として大きなものをもっているわけです。
そんなことを考えていると急行1駅目の石神井公園駅に到着。人の移動に伴ってまた何か言われるようなら、今度こそ決着つけてやると目に力を入れていたんですが、なんとその者は石神井公園駅で降りていったのです。
心の中の炭治郎が「貴様ぁああああ!!逃げるな!!責任から逃げるな卑怯者!!」と暴れ出しそうになるものの、いやとっとと降りろ二度と西武鉄道を使うな。
その後も憤懣遣る方無い気分でいながら、ひばりヶ丘、所沢を過ぎ、自宅の最寄り駅に到着。網棚からリュックをひったくって降りたわけです。
下車後、ふしゅーっ、と腹から送気を一呼吸。
くっそー…なんだあの野郎…の気持ちはまだ消えないものの何時までも持っていても仕方ない。とっとと家に帰ろう…と思っていたら、後ろから肩を叩かれました。
ついさっきのこともあったので「なんだなんだ?これ以上何が起きうるんだ?」と一瞬思ったのですが、肩をたたいた主は同じ車両の同じ口から下車してきた別の乗客の方で、開口一番「お兄さん悪くないよ!」と。
嘘松乙じゃないんですって、本当にあった話なんですって…。
池袋駅でのその悶着を見ていたらしく「あれは嫌な人だったねえ…。あんなん忘れたほうが良いよ。まぁ、蚊にさされたみたいなもんだと思って。いや、お兄さん悪くないよ。ライオンズファンに悪い人いないって思って声掛けようと思って。」と。
いやー…このお姉さんが声かけてくれたの本当に救われましたよね。
自分としてはリュックを前に抱えて乗っていたわけだけど、自分のことはどこまでも客観視できない。スマホ操作するときになにか当たったのかもしれないとか、いろいろ考えるわけですよ、ブチギレの反対側で。
「そうはいっても自分にもなにか落ち度が…?」みたいなことを考えないでもなかった。でもその反対側には「なんだあのやろう!」の気持ちもありつづけるわけで。
なので、その様子を見ていた第三者が「あなたは悪くないと思いますよ」と言ってくれたのは非常に心が楽になる。
昔大学時代にコンビニでバイトしていたときのある一夜のことを思い出します。
コンビニ夜勤に入っていたときに、なんか知らないけど暴言を吐いて帰っていった客がいたわけ。今より10年も若い自分ですから、当意即妙に返すこともできず(ま、そんなことはする必要もないんですが)、かといって「ほーん、バカがなんか言ってラァ」と流すこともできず。ぐぬぬ…とレジで拳でも握っていたんでしょう。
そしたらそのすぐ後にレジにやってきたトラックドライバーらしきお兄さんが「兄ちゃんも大変だね。気にしないほうが良いよ」と優しい言葉をかけてくれたのです。
そんなに長い期間バイトしていたわけでもないですが、あのエピソードはなんだか妙に心に残っています。
それと同じようなことだったのかもしれないですね。
西所沢で乗り換えて、これからベルドに向かうということでした。奇しくも優しいライオンズファンの方に救われたことになる。
最後に「ごめんね、さっと助けられればよかったんだけど」とも言われたのですが、「いやいや、ここでわざわざ言ってくださったので、穏やかに家に帰れます。ありがとうございます。」と言葉を交わして別れました。
これが、本日の一部始終。
いや本当に不思議なもので、電車を降りた瞬間の「これはもう今日は暴食するしかないな…」というほどのブチギレがこの会話でもってスーッと晴れていったわけですよ。「こんなことあるんだ…人の世ってまだまだ捨てたもんじゃねえな…」って。
で、家に帰りながら、「あれ…?なんであの人俺がライオンズファンだってわかったんだろ…」と。これは本当にわからない。仕事からの帰りですからフラッグもユニフォームも持っていない。
ただ、問題の発端となったリュックサックがこれ。
ライオンズファンクラブ入会記念品のリュックを通勤に使っているのです。これを以てあのお客さんは俺をライオンズファンと判断したのかもしれない。なんにせよ、そのために一言声をかけてくれて自分が気楽に家に帰ることができたのだとしたら…。これが所沢という街、なのかもしれません。
その場でしっかりお礼を言うことができたので、Twitterなんかでよくあるその人に届け!系の話ではないのですが、これは今日備忘録としてブログ書いておかないと嘘だなと思ったので長々と書いてしまいました。
心穏やかに、過ごしていきましょうね。
114.4