昨年末のこと。友人のプロデューサーが、とあるリストをメールで送ってきた。「所属事務所のアイドルたち全員にイメージソングを考えてる最中なんだけど、ここまでできた分がこれ。どうよ?」と。
その時は九州での仕事の最中だったので、あとで見てみるよ。と返したものの、リストの中にほたるちゃんの曲があったので試しに聞いてみた。
曲はコトリンゴさんの2006年の楽曲「こんにちは、またあした」だ。寡聞にして知らなかった俺は、サンプル部分を聞いてみる。
「こんな普通の暮らしの中幸せはあるのです」という歌詞が気にかかり、出先でダウンロード購入。
移動中の車内で聞いてみる。
こんにちは さよなら おやすみ またあした
こんな普通の暮らしの中 幸せはあるのです
彼もまた芸能界で生きているのだから、白菊ほたるの不運体質を知っているだろう。そのなかで、この歌詞がある曲を選んだんだな、と思うと感慨深いものがある。
ほたるちゃんのプロデューサーが言っていた。「最近、ほたるが不幸じゃなくて、不運って言葉使うんです」という話は事務所内のプロデューサー間では広がりを見せつつあったので、輿水幸子さんの担当Pの友人もそのことを知っていたのかもしれない。
この生活の中に、私の幸せはある。ほたるちゃんのイメージソングとしてそういう歌詞の曲を選んだのは、正直グッとくるものがあった。
落ち着いたサウンドもイメージに合う。ピアノの旋律が優しく撫でる。ほたるちゃんのこれまでの苦労を労わるように、そして明日への力とするように。
歌詞の最後は、こう締めくくられる。
ふつうの言葉を 頂くだけで
わたしは 生きてゆけるのです
優しさにあふれた、ふつうの言葉。それをかけてくれるたくさんの人、ファンがほたるちゃんにはいる。
白菊ほたるのイメージソングとして選んだと言っていたけど、奇しくも「今の」白菊ほたるのイメージソングとしてピッタリだな、と思った。
もし、このイメージソングをほたるちゃんがカバーするようなことになったら、ほたるちゃんのプロデューサーは無事で済むかな…。あの人また泣いちゃうんじゃないだろうか。
プロデューサーだけじゃない、ファンの人も感極まっちゃいそうだなぁ…。俺個人もほたるちゃんのファンとして胸に熱いものがこみ上げそうだ。
早速、ほたるちゃんのプロデューサーにこの件を伝えた。彼は年始にほたるちゃんの大きな仕事があるということでその準備に奔走しているのだが、律儀な男ですぐに折り返しの電話来た。「俺もすぐに聞いてみるよ。輿水さんのプロデューサーさんにお礼を伝えといて」と。
その時に自分が思い浮かんだほたるちゃんのイメージソングも伝えてみた。あくまで雑談として。そのほかいくつかの連絡事項をやりとりした後電話を切った。
師走に入ってからというもの、ほたるちゃんのプロデューサーはずっと忙しそうだった。師も走らせるから師走とはよく言ったもの。
俺はというとその後の九州出張中、カーステレオでよくこの曲を聴きながら各地を回っていた。
曲からアイドルのイメージを想起させるという試み…たしかに入り口としては手軽だし効果的な展開かもしれない。
そんなことを考えながら、「ふつうの言葉」を口ずさむ。この九州にもほたるちゃんの頑張りに背中を押されている多くのファンがいるのだろう。
そう思うと車窓からの景色にも親近感が湧くようだった。
ところで、友人のプロデューサーへの連絡を忘れてしまっていて、そのことを思い出したのは出張から帰京した後のことだった。