人生、東奔西走

自分の人生の備忘録のつもりで作りました。

日本沈没

AmazonPrimeで岡本喜八監督版『日本のいちばん長い日』や東宝変身人間シリーズの『ガス人間第一号』などが配信されていると聞いた。

おお。と思ってプライムを開くともう一つ昭和の大作がプライム会員に無料配信されていた。1973年公開の『日本沈没』だ。

 

 

小松左京原作『日本沈没』についてこのブログでも度々…あれ?取り上げてねえ。そうだったか…。

中学校のときに原作小説を読んで、その後の2006年の樋口監督版を劇場で見て、一色登希彦版コミカライズ、昭和テレビドラマ版。そしてこの1973年の映画『日本沈没』と順番に見ていったのだった。

久しぶりに1973年版『日本沈没』を見ようと昼間っから見ていたわけだ。

(以下各種『日本沈没』のネタバレあり)

 

日本沈没のストーリーは大雑把にいうと

①科学者・深海潜水艇乗りらが日本列島に起きつつある大規模な地殻変動の予兆を知る

②それを裏付けるように列島各地でおこる地震・噴火。政府は調査と並行して日本国民の国外脱出を計画。

③いよいよ変動が起こり始める。日本列島が消滅するまでの終幕

まぁ、こんな感じ。

 

1973年版日本沈没は基本的に原作の流れを踏襲している。(ちなみに一色版コミカライズ、2006年劇場版が原作の展開と大きく異なっている。時代も違うので仕方ないが)

日本沈没に際してなにもしないほうがいい」(1億人は日本列島と運命をともにする)という結論が提示されるなど国土を失った民族の行方という原作のテーマを描きながら、東宝パニック映画三部作の一発目の側面もあり、豪快な特撮シーンも見どころの一つ。

第二次関東大震災発生のシーンなんて沿岸コンビナート爆発、津波と堤防決壊、都内を襲う大火災、ビル街からの窓ガラス落下etc正直小さい頃見たら怖すぎてトラウマになりかねないような描写もある。その他日本列島の崩壊(九州四国紀伊半島の分断、三陸海岸の崩壊)の描写なんかも巨大ミニチュアをセットして作っているのだろうと思われうが、ミニチュア特撮でこういう超俯瞰図を見ることは稀であったので新鮮だった。

クレジットされている中野昭慶特技監督は昭和『ゴジラ』シリーズでもおなじみの特技監督だが、平成の川北特技監督が合成技術による光線技を多様するのに比して、爆発の中野と呼ばれることもあるらしい。上記の関東大震災シーンでの延々爆発が続くシーンはその側面を垣間見ることができる。(陸自ヘリによる消火弾投下シーンも結局爆破っぽくみえているのはご愛嬌)

 

さて、同じ映画という媒体だから2006年の日本沈没とどうしても比べてしまいがちなのだけど、この1973年版日本沈没はしっかりと日本列島を沈めて完結している。

必ずしもハッピーエンドではないのだけど、列島を失う日本人というテーマに基づく一貫したテーマのもとにやっている。そしてこれは必ずしも悲劇的な結末ではない。全世界に離散する国民。当初はなにもせんほうがええというまでもなく、遅々として進まない退避計画故にほとんどの日本人が列島と運命をともにすることになろうとしていた。が、死にものぐるいの救出作戦。作中の幸長助教授の言葉を借りると「ゲンキンなもんだ。いざ沈み始めると世界中が助けてくれる」というもの。世界に離散した日本国民であるが、この経験を共有した人類の歩みだす未来はおそらく現世とは別のものになる予感を与えてくれる。

一方の2006年版のラスト日本列島は深海潜水艇乗りの決死の作戦によってすんでのところで国土の完全消失を阻止しハッピーエンドを迎える。いやまぁ、その結末をハッピーエンドと呼んでいいのかは議論の余地があるだろう…俺はあんまりしっくりきていないエンディングであったりする。列島沈没直前において日本は全世界から見捨てられ沈みゆく国土とともに運命をともにするしかねえのかという雰囲気になっている。沈没を阻止したものの、その後の世界ではおそらく「あのとき約束を反故にしたな?」って感じで因縁をつけあうようになるのだろう。

 

あと主人公の小野寺俊夫。

原作小説では政府の対応が調査から国外退避に移行する段階で「(深海潜水艇乗りである自分が)もうすることはないし、この国にしてもらったことに対する御恩奉公は十分だろうと思うんです。婚約者とスイス・ジュネーブにいきます」という小野寺。

これに対してチームの仲間から「御恩奉公なんて考え方がいかにも最近(1970年代当時)の若者らしい」という評価をもらっている。別に「最近の若いもんは」という風体の意見ではなくて、「気持ちのいい若者だった」「自力で逃げられるものは逃げたほうがいい」という向きのところに落ち着くのだが。

実際一身を賭して同胞を救うべく奔走する山本総理や田所博士や退避計画のチームに比べると、小野寺のスタンスは少し違ったものに見える。最終的には変動の混乱の中で婚約者と散り散りになってしまい世界のどこかで再開する日まで生き延びることを決意して物語は終幕する。単純にヒロイックな人物でないあたりが良い。この側面は一色版で更に強調されている。俺が一色版をかなり好んでいるのはそのあたりによるところもあるのかもしれない。

加えて、演じる若かりし藤岡弘さんの色気がすごい。探検隊ばかりやってる人ではないのだ。

 

 

現在Prime配信中なのでお時間ある方はいかがだろうか。

 

 

110.6