人生、東奔西走

自分の人生の備忘録のつもりで作りました。

そうだ投票に行こう(800キロ先の投票箱に行く人の場合)

私は今、成田空港から日暮里へ向かう京成スカイライナーの車内にいる。

土曜日の12時、普段であれば週中の労働の疲れをとり惰眠から起き上がる時間帯なのであるが…、私はまだ部屋のベッドに辿り着いていない。残業祭りでもデスマーチでもなく、単純に自分の不注意に起因するものである。なのでブログに何が起きたのか、その顛末と旅程を書き残し将来への備忘録にするとともに、要らぬ労力を要した20時間分の自分を供養しようと思う。

 

 

ことの始まりは火曜日…だったと思う。

仕事帰りに友人のラジオ配信を聴いていて、今度の衆院選最高裁国民審査の期日前投票に行ってきたという話を聞いた。そうか今週末だったな、忘れないようにしよう…なんてことを考えていたが、いつもなら届いているはずの投票所への入場券がまだ届いていないことに気がつく。

「転居したばかりだから、その辺りの発送にも影響あるのかな」などと呑気に構えていたが、いやしかし1週間前にもなって届かないのは流石におかしい。そう思って調べたらば、総務省がこんなことを言っていた

 

「住民票を移して3ヶ月経過していない場合は、新しい住所地で投票できません」

 

私はこの8月に転居したばかりでありこれに当てはまっていたというわけだ。所沢からは待てども待てども俺に投票所入場券を送ってくるはずがない。

そしてこの条件自体は確かに言われてみたら「あー…そんな話聞いたことある…」って思い出すのだ。そしてこの条項自体には納得もしている。そうでなければ選挙のたびに各政党の支持者があっちに転居こっちに転居…ってことにもなりかねないだろうし。

それにほとんどの人はこの3ヶ月ルールにあてはまったとしてもそれによって選挙権がなくなるわけではない。短期間で転居を繰り返してなかったり、転出したけど転入しないまま放置しているとかでもない限り、新住所で投票できない人は旧住所の選挙区で投票ができる。

…あー、数日前に松山市から届いていたのはそれだったのか。よくよくみると不在者投票の案内であった。松山の選管にこの葉書を返送したら、投票券セットを送りますよってことらしい。そのリミットは投票日から数えて5日前の17時。そう、まさに火曜日にこれに気がついた時点でアウトだったわけだ。

 

 

この時点で俺がとりうる選択肢は二つ。

一つには、打つ手なし、今回は仕方ない。次引越しすることがあればその時は気をつけようと投票見送ること。

二つ目は期日前にしろ投票日にしろ松山の指定の場所に行って投票するという手段。

 

冒頭、京成スカイライナーの車中でこの記事を書いていると申し上げたので後者を取ったということはもうバレているだろう。

では何故、後者を取ったのか。

 

なにも「この一票は尊い、自分の権利を放棄しては次のその時まで何も言えなくなる」とか「普通選挙権獲得までの先人たちの不断の努力を想えば、この一票を無駄にすることなのはできない」とかそういう崇高な理念があったわけでは断じてないことを先に言っておきます。

そういうロジックは俺を動かすことはない。ないはずなんだが…

 

結局何故後者を取ったのか、いまいちわかっていないまま行って帰ってきた。おそらく理由を述べるとするなら「自分の失策によっての投票放棄は自分の納得を得るところではない」というのが言葉にしてみたところじゃないかな…と思うんですよね。国政選挙ではないあることについて、そう遠くない過去に自分の失策によって投票できなかったという経験を今年していることも少なからぬ影響はあったのかもしれない。

俺はこの「自分の納得を得る」という行動原理を「僕がそうすべきと思ったからだ」と同じニュアンスとして捉えてこれまで自分の納得ってワードを結構なパワーワードとして使ってきた。しかし今回みたいに懲罰的に使うこともあるんだな…。それは本当に納得という言葉で形容されるべきものなのだろうか。

前置きが長くなりました、なんにせよこういう端末と理由で、私は不在者投票を行いに松山に向かうこととなったのです。理由が曖昧?人生そんなもんよ。

 

 

では、向かうと腹を決めてからの話。まずはその方法論を考えねばなりません。

というわけで往路について。

現在の仕事は定時19時なので、移動を開始するのはそこから。しかし幸い品川区の職場なので、仕事が終わってからそのまま出発してしまえば、新幹線なり羽田空港なりバスタ新宿なりに向かうのはそう難しいことではない。

松山空港行きの羽田発の便には保安検査場を超える時間を考えると間に合いそうにない。夜行バスも同様に19時台浜松町だったりバスタ新宿というのは余裕がなさすぎる。この辺りは東京から松山まで直接向かう方法だった。鉄道移動で直接行こうとすると、岡山から先の在来線特急がネックになり18時台東京駅発でないとその日のうちには間に合わないし、間に合ったとしても深夜に到着してもホテルで一泊する費用が余分にかかる。これも除外。

最後に一応車移動も考えたが、仕事終わりに徹夜で車をかっ飛ばして松山に行くのは流石に体力的に自信がなかったので除外。

こうして往路についてなんらかの交通手段で一発で向かうことは不可能と察し、次にこれらの組み合わせで向かう方法を考えた。

組み合わせで有効なのは新幹線で行けるだけ西に向かい、そこから先をフェリーなり夜行バスに頼るというもの。

候補となる新幹線終着地は3つ。

一つは広島。広島から松山まではフェリーの直行便が出ている。しかしフェリーの直行便は夜間便がなかったためこれも除外。

次に新神戸新神戸から三宮まで乗り継げばそこからは高松行きのフェリーが出ている。過去にこういう鉄道の止まっている時間帯に深夜フェリーで距離を稼ぐといつ方法は使ったこともある。が、高松港から高松駅までの距離があることと、結局高松始発で松山まで特急を使う面倒さと時間の問題もあり、これも除外。

最後に新大阪。大阪エリアから愛媛に向かうには夜行バスかフェリーがあるが、大阪南港〜東予港のフェリーは南港発に間に合わないため除外。

最後に残ったのは新大阪からの夜行バスだがこれは22:50に新大阪駅のバスターミナル発。品川を19:59に出発する新幹線で新大阪着が22:21着。おお、ちょうど良いではないか。このようにして往路の移動手段が決まった。

 

復路については時間の制約がないので正直なんでも良かったが、せっかくの土日をできるだけ潰したくないという気持ちから空路を利用することにする。

ちょうど成田空港までの便が10時過ぎに松山空港を出発するというのでこれを確保する。期日前投票の投票場は8時半に開くので投票後速攻で向かえば間に合うだろう。LCCなので費用面からもありがたい。

 

さて、こうして行き帰りの交通手段が決まった。あとは実行を待つのみ。

ここから先は金曜夜〜土曜昼までの東京〜松山弾丸ツアーの実践レポートです。

 

 

金曜夜、19時半に職場を出る。おいおい早速遅れが生じてないか?19時定時を元に予定組んでただろう?

でも大丈夫。品川駅19:59の新幹線に乗れば良い。時間的マージンを取る、旅の基本のキの字ですよ。

さて品川駅までどうやって行こう。そこは考えてなかった…どうせ鉄道ですがだろうと見込んでいたが。愛用の乗り換えアプリではバスの案内しか出てこない。あれ?そのバス乗り場どこですか?刻一刻と進む時間に俺は…タクシーに飛び乗った。

余裕を持っていて良かった、余裕がなければもっとパニクって品川シーサイド辺りから歩いて行くもんしていたかもしれない。

なんにせよ19時50分前には品川駅につき、新幹線チケットを購入する。実はこれ前の日に買って帰る予定だったのだけど俺がすっかり忘れていたので慌ててここで買うことになった。が、時間にマージンを取っていたので大丈夫。優雅に深川飯の駅弁とレモンサワーなどを買い込んでホームで待つ。待つ際に新幹線のやってくるホームと逆側で待つなど微笑ましいトラブルなどはあったものの、無事新幹線に乗り込むことができた。

正直新幹線に乗ってさえしまえば、あとは大きなトラブルがない限り放っておいても松山に着く。気楽になった俺は深川飯を平らげて檸檬堂を飲みながら、流れていく車窓の風景を見ていた。

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松山〜岡山〜東京と在来線特急と新幹線で移動する時は、在来線特急区間が足を引っ張ってしまい、トータルでの移動の楽さを感じることがあまりなかったが、東京〜新大阪間のあっという間に着くことよ。2時間半で大阪に行けるって冷静に考えると凄まじい利便性だ。ありがたい。

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無事新大阪駅に到着したので、バスターミナルへ降りる。バスの乗車票には隣接ビルの1Fと書いているが写真の一つくらいはつけておいてくれても良かった。

それらしきバスターミナルで待っているが「本当にここであってんのかな…」と不安は募る。定刻の少し前、幕張行きの深夜バスが到着し、待っていた人のほとんどを乗せて出発してしまった。

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あぁ、本当にここであっているのか?夜行バス乗りミスにも前科がある。ここでバスを逃すと俺は大阪から脱出することができずに土日両日を潰す羽目になってしまう…。

という心配を吹き飛ばすかのように見慣れたオレンジ色の車体がバスターミナルに姿を表した。阪急、伊予鉄共同運行なのでバスの車体はそのどちらかのものになるそうだが、これほど愛媛行きをわかりやすく示すバスもない。目に伊予鉄 橙オレンジ 夜行バス

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出発直前に松山行きと松江行きを間違える乗客が発生するなどちょっとしたトラブルはあったもののほぼ定刻通りにバスは出発。座席は列独立シートの最前列センターであった。

最前センター、ライブやイベントであれば神席であるが夜行バスに関してはその限りではない。左右の席であればカーテンで簡易個室ができるがセンター席はそうではない。上の棚が使用しにくいのも同様だ。

また最前であるので人の乗り降りの度に間違いなく脇を人が通る。実際4時の休憩のときは通る人がぶつかって起こされてしまった。まあ、夜行バスは座席選べないしこれはやむなしだろう。むしろこの座席の場所特有の問題以外は到着時間、費用面において夜行バスは未だに有能な移動手段だ。

ただ、寝ているときもマスクの着用必須というのは少し眠りにくい面はあった。昨今の情勢に対して改めて恨めしい気持ちになる。

なんにせよ、久しぶりの夜行バスに寝付きは悪かったものの、ノイキャン機能付きのイヤフォンで延々ASMRを聞くことで要所要所で眠りながら四国上陸、松山に向かう。

 

午前5時すぎ、松山IC以降の各停留所に停まり乗客を降ろし始める。自分は5時半に松山の歓楽街入り口にて降車をする。

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スーツのジャケットはもう暑くてリュックの中にしまってしまっていたが、肌寒いくらいの夜明け前の空気が気持ち良い。「夜明け前の薄暗い道を誰かがもう走っている」とは海援隊のスタートラインの歌詞であるが、まさにそういう心持ちであった。

期日前投票は8時半にスタートなので3時間ほど待つ必要がある。とりあえずこの時間でもやっているお店ということで松屋に向かい朝食を食べる。

 

それでも2時間は余るので少し歩いた先にある、自分が松山に住んでいたときによく通っていたスーパー銭湯に向かう。久しぶりにいったスーパー銭湯は入り口がレインボーの提灯で飾られていたが、中は2ヶ月前と何ら変わるところがなく夜行バスの疲労をとっていた。低温炭酸泉にぬわっと浸かりながらボーッとしていると、「俺は今本当に松山にいるのか」という変な感覚に陥っていた。この時点で仕事を終えてから10時間ほどだからだろうか。同時に「何故こんなことを…」という気持ちにもなっていた。

時間、体力、費用と釣り合いの取れている行動ではない。ただ、その釣り合いと比べても自分の納得というものは捨てることができなかったが…。

結局これから先の人生もこういう感じで自分の失策に対して、妙なこだわりをもつ自分の納得のためにこういう意味のないことをしていくのかもしれない。そんなことを考えていると7時半。風呂から出て、期日前投票所の近くに向かう。

 

期日前投票が8時半から、松山空港発の飛行機は10時過ぎの離陸。決して時刻に余裕があるわけではない。

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8時半の少し前に投票所に行くと、たしかあれは期日前投票をするという宣誓書を記入。その後8時半になると投票所が開き受付が始まった。自分の手前には二人ほどが並んでいた。…ああ、これもしかしてもう少し早く来ていれば投票箱の中身が空であることの確認ができていたのか?期日前投票でもあれあるんだろうか。しまったなー、なんてことを考えいてたが受付の段で手間取ってしまった。

期日前投票の宣誓書に記入する住所は現住所ではなく前住所なのだ。喜び勇んで埼玉の住所を記入したが、投票所受付の人はその住所を確認するすべがない。もう一度宣誓書をもらって、前住所を記入すると今度は前住所を間違えていた。覚えなくて良い記憶はとっとと捨てるように体はできているらしい。引っ越す前はあれだけスイスイ書いていた住所を間違えるとは…。もう一度記入してようやく投票用紙をもらう。

ユポ紙の感触を味わう間もなく、選挙区、比例代表最高裁国民審査と済ませ投票所を出る。改めて自分が投票した諸々について「ぜったいに当選してほしい」といったような強い気持ちをもっていたわけではない。消去法的選択と言われても仕方ないのだが、まあそれは自分だけの話じゃないんじゃないかなと思う。なんにせよ、これにてこの長距離移動の目標は完遂。投票所を出たのは8時37分のことだった。

 

さすがに疲労の色が濃い。少し歩いて松山市駅前からタクシーを捕まえ、空港まで直行する。バスを待つ手もあったがもう疲れてしまった。タクシーの車内でも半ば眠っていただろう。

空港につくと保安検査場の締切まで少し余裕があったので、空港のマドンナ亭といううどん屋で食事をとる。このうどん屋がめちゃくちゃすきなのだがその理由はおそらく高校の食堂のうどんに味が似ているから。安っぽい味ってわけではなく安心する味なのだ。そしてそこらの高校の食堂よりはもちろん美味しい。ここでかき揚げうどんを食べた時、あー、愛媛に帰ってきたんだなというのを少し実感した。こんなに早く帰ってくるつもりはなかったがまあ…、帰省というのはこういう感傷に浸るのかね。わからないけど。

 

うどんをいただいて保安検査場を越してからも、飛行機をまつゲートを間違えて「やたら人が少ないなあ」と感じて搭乗開始10分前に気がつくなどちょっとしたミスはあったものの、無事搭乗。

天気がよく、道中石鎚山、富士山が両方見えるなどしたけども、基本的には夜行バスと同じくノイキャンのイヤフォンをつけて怪談を聞きながら寝ていた。

房総半島東側に回り込んで降下する頃に目が覚めた。

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昨今の情勢故に飛行機は久しぶりに乗ったけど、特に大学時代はこの成田航路をよく使っていたなあ。羽田-松山航路は便も多くてよかったけどLCCの安さには勝てなかった。かつて見慣れた田園風景を降りていくと程なく成田空港が見えた。これに着陸をすると今回の移動の大半はおしまい。あとは関東圏の鉄道網に頼って帰るだけ。

成田空港に到着してからは、京成線の乗り場まで誇張なく1キロ弱ほど歩くのだけど、長距離移動ハイになっていたのかゴイゴイに歩いていって、乗り換え待ちなくスカイライナーに乗車。そして…

 

 

 

スカイライナーの車内で書いていると冒頭で述べましたけど、その車内で書けたのは夜行バスの下りまで。そこから先は日曜日の俺が引き継いでいまここまで来た。

ま、その後は成田を出発してから1時間半ほどで最寄りの駅まで帰ってきました。恐るべしは首都圏鉄道網。

 

そして、なんでこんな無茶な移動をしたのか、昨日の自分は理由がわからないと言っていたけど、この記事を書いていて思ったことがある。

単純に長距離移動をしたかったから…なのではないかと。今回、選挙の不在者投票期日前投票という俺の長距離移動に大義名分を与える事由を目の前にして、それを逃すということ…そのことにこそ自分は納得しなかったのではないか。

長距離移動は何が楽しいか、それはまずは方法を組み立てるところ。普通にやったときにできない時間と距離を、いろんな手段を組み合わせ方法論を構築する。そこには旅程を組み立てるのと似たような楽しさがある。

そして、それを実践すること。今回、この移動手段を組み立てるときに過去に使った数多の長距離移動手段が手札にあった。それはそれがあるということを知っているだけじゃなく、実際に移動したからこそ経験に基づく取捨選択をすることができた。今回も考えた後にこれを実践することで、この経験はいつかの自分に返ってくる。

ああ、そう考えれば考えるほど、長距離移動は未来の自分への投資なのかもしれない。いつかこの方法を使う日が来るのかもしれない、というときのための保険か。

 

以上、今回自分が長距離移動をする羽目になった顛末、その道中。そして最後にブログ記事を書きながら気がついた、今回の弾丸ライナー東京松山往復長距離移動の旅でした。

いいっすか、皆さんは転居してほどなく選挙があったとき、このようなミスをしないように気をつけてくださいね。前住所の選管からハガキが届いたら速攻返送。これが大事。俺も次は気をつけよう…。

以上、800キロ先の投票所に投票に行く羽目になった一有権者の笑い話でした。笑えよ。