人生、東奔西走

自分の人生の備忘録のつもりで作りました。

DLsite ASMR作品 2020年度上期私的おすすめ5選

昨日の雑記で申し上げました通り、今年度の上期の私的ASMR音声のおすすめをピックアップしていきたいと思います。

 

数年前、寝付きの悪い日々を送っていた自分はASMRというジャンルに出会って、「ほう…こういうのがあるのか」と聞いてみたところ睡眠導入に大変効果的でありました。

それ以降、寝るときにはASMR作品を聞きながら布団に潜り込むのが日課となりました。

 

そも、ASMRとはなんぞや?という疑問もあるかもしれません。

ASMRとは…

「ASMR」とは「Autonomous Sensory Meridian Response」の略で、直訳すると「自律感覚絶頂反応」という意味です。人間が聴覚や視覚から感じる反応で、脳がゾクゾクするような心地良い感覚のことを指します。

【ASMRとは】読み方や意味は?人気は食べ物の咀嚼音やタッピング音 おすすめ動画&イヤホンを紹介! - 特選街web 

 

要は「なんか心地よい感覚」であり、そのうち聴覚に訴えかけるものを自分はASMR音声と読んでいます。ASMRをどう読むかはご自由ですので「エーエスエムアール」でも「アサムラ」でも「アスマー」お好きなものを選んでください。今挙げた3つのうちの1つを自分も略称として口語では使っています。

上記の定義からすれば、必ずしも声というのは必要ではない要素なのですが、同人作品などを販売しているDLsiteでは声がのった作品が多く販売されていて、自分もそうした作品を安眠導入に用いています。単純な効果音のみならず、シチュエーションや声色等々の情報も上乗せされることで安眠効果が高まるっていうこともあるのかもしれません。

 

今回はそのDLsiteさんで今年度の上期に発売されたASMR音声作品のうち好きな作品5選をピックアップしたいと思います。季節の変わり目に寝付きが悪い…そんな方がいらっしゃったらひとつ試しにいかがでしょうか。

 

 

 

  • 【5時間・波音耳かき】あやかし郷愁譚 ~マコ まことこま~【魚釣り・野外調理】

 

まずひとつ目。『あやかし郷愁譚』より。このシリーズは高知の田舎を舞台に、ひとではない存在・あやかしと、聞き手であるあなたの暮らしを描いています。

過去にはコロポックルや雪女などなどメジャーどころのあやかしも登場していますが、この作品では二人一対のマコというあやかしによるASMR作品です。

この二人一対のあやかしの片割れである、こまちゃん。彼女の持つおっとりとした、ふわっとした空気感が大変に癒やし空間を作っております。個人的に大変好ましく思う空気感の持ち主でありますね。また、魚を捌くシーンでは「あんまり見てて気持ちのいい場面じゃないよ」と聞き手を気遣ってくれるなど優しいハートの持ち主でもあります。

そんなこまちゃんから聞き手を呼ぶ時の呼称は「おにいちゃん」です。好き嫌いは分かれるかもしれませんが、世の長男の皆さんはたまにはストレスとか不安とかに耐えて頑張るんじゃなくおとなしく癒やされてみてもいいのではないでしょうか。

ASMR部分ではタイトルにある魚釣りのシーンでの川辺の音など水音が大変心地よい作品になっています。また、二人の持つカツオの骨で作った耳かき棒は、耳かきをしてもらう最中に海の波音が聞こえてくるという仕様のアイテムでもあります。ヒーリングサウンドの大メジャーですからね、水音。

同時にもう一つ、魚釣りシーン周りでの道具関連音の心地よさ。疑似餌を作るシーンでのハサミでの切断音や針に疑似餌を巻きつける時の「キチキチ…」という締め付け音、リールを巻き取るときの「カチカチ…ギリイ…」という音、このあたりの音がすごく気持ち良い。おすすめです。

 

あと個人的にツボなシーンとしては、こまちゃんのかたわれのまこちゃんが釣り上げた魚に対して「こんなところまで何しに来たの。だから釣られちゃうんだよ」と語るシーンがあります。めっちゃ優しい声音なんですけどこの魚このあと美味しくいただかれちゃうんだよな…。

キャラクターの雰囲気、癒やしの水音、ハイレベルな道具音と大変満足のいく作品でした。あやかし郷愁譚シリーズは収録時間のボリュームもなかなかのもので、この作品も差分無しで3時間という代物。価格は決して低価格帯ではありませんが、クーポンなど持っている人ならぜひとも試してみてほしいシリーズであります。

【5時間・波音耳かき】あやかし郷愁譚 ~マコ まことこま~【魚釣り・野外調理】 [Whisp] | DLsite 同人

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  • 【シェイカー・耳かき】BAR『Envelop』マスター・朱里【CV.櫻川めぐ

自然あふれる高知から、おそらく都会だろうと思われるバーの一室へ…。

今年の初夏の頃合いにかけて、実はバーテンダーASMRにはまってまして…。ちょうどその頃に程よく出てきてくれたのがこの作品です。

カクテルを作る時の動作にはステアとシェイクってあります。シェイクはシェイカーに素材を入れて振る作り方。ステアはステアグラスに素材を入れて混ぜる作り方。音単体で見たときにはステアの時にステアグラスの中で氷がカラカラと鳴る音がめちゃくちゃ好きなんですが、この作品ではシェイクでカクテルを作ります。シェイクもシェイクでシェイカーにブランデーを入れる音だったり、氷入れる音だったりがめちゃくちゃいいわね…。ステアとシェイクのどちらが好きというのは好みの問題だと思いますのでぜひYou Tubeなどで探して聴き比べてみてください。

ASMRの音声作品を聞くときに、聞き手であるあなたと話し手であるキャラクターの関係性が事前にある程度深まっているのか、初対面なのかでシチュエーションに挑む姿勢っていうのは異なってきます。先程挙げたあやかし郷愁譚の作品は後者、この作品は前者になります。昔は前者のパターンの作品を聞くときに「ああ、つまり俺はこの人とは知り合いで…はいはい、そういう関係性なんですね」と考えながら聞いていて睡眠導入の妨げになっていたりもしたんだけど、長いことASMR作品を聞いていくうちにそういうこともなくなってきた。コツというほどのことでもないけど、何もかもを「そういうものか」で受け入れていけばいいですよ。

「あー、俺常連客なのかー」「あー俺はアレキサンダー飲む人なのかー」「あーマスターから見ても疲れがダダわかりな顔色してるのかー」とボヘーっと進んでいくストーリーを受け入れていけ。

マスターの朱里さんは、疲労困憊の雰囲気のあるあなたに一杯ごちそうしてくれた上に肩のマッサージ、耳かきをして疲労を癒やしてくれます。深夜までの業務であろうバーの閉店時間後もお店を追い出さないその優しさに…あれ、なんか感想書きながらちょっと目頭が熱くなってきたな…。後日ちゃんと元気なときに行って安心させてあげないとな、って思います。

ちなみに自分がこの作品を購入したきっかけなんですが、演じている櫻川めぐさんのツイッターで見て「えっ、ASMRやるんすか。買います買います」ってなった自分の中では珍しいパターンなんですね。今年はこういった感じで、俺でも事前に知っていた人たちがASMR作品に参戦してくれるシーンを良く見ている気がする。黒沢ともよさんや藍原ことみさん、中上育美さんなどのASMR作品がポーンと販売されて驚きながら即決していた記憶があります。間口が広まって作品の数がどんどん増えていくの喜ばしく思うのでいい流れだなと思っています。

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この作品を配信しているのはASMR音声サークルCANDY VOICEさんです。同サークルのDLsite上での一番古い作品の配信が今年の6月。自分の認識では今年突然表れて大ヒットを飛ばしまくっている認識なんですけど、あってるんでしょうか。続編が絶賛リリース中の『ねこぐらし』シリーズもいいんですけど、このサークルの作品で一番好きな作品がこの『いやでんっ!』シリーズの西日本編にあたるこの作品。

1編成(1室や1両ではない)まるまるが自分のために運行されるという寝台特急での旅のASMR。えっ、どうしたの御召列車かなにかなんすか、聞き手の自分は一体どんな心持ちで聞いていたらいいの。俺は何者なの…。いえいえ、そんなことを気にしていては寝られませんよ。そんな特別待遇に対しても「そっかー、そういうものなのかー」といいうおおらかな気持ちで受け入れましょう。

この『いやでんっ!』シリーズは申し上げた通り鉄道で各地を巡る旅の中でのASMR作品です。なので、なんと申しましても電車の走行音が心地よいという人におすすめできます。「ガタンゴトン」というレールの継ぎ目の走行音が気持ち良い人におすすめできます。電車走行音絡みだと警笛や鉄橋渡るときの音など豊富に取り揃えております。…警笛聞きながら寝られる人間はいないだろうけど、まぁ、一連の流れのなかでASMRを楽しんでほしいですね。

設定上は名古屋、京都、大阪、熊野古道鳥取、岡山、山口と各地を巡っているんですが、ASMR上のポイントは海沿いの鉄橋ど真ん中で電車を停車して波音を聞くシーンが旅情を感じさせます。いいっすなー、波音。でも、…鉄橋のど真ん中?えっ、これ在来線の運行大丈夫?気の済むまで停めてていいとガイド兼車掌さんの瑞季ちゃんは言ってくれますが、これ大丈夫なんですね?近隣住民のみなさんの生活に影響はでない?夕暮れのこの時間帯に在来線の鉄橋ど真ん中でゆっくりしてても…。しかもこれ聞いてる間すれ違う車両もいなかったから、複線のエリアだとしても上りも下りも停めて…。いや、いいんだ!聞いてるあんた疲れてるんだろ!いいんだそのくらいやっても!聞いてる間くらい安眠導入に集中していいんだ!

さて、旅のパートナーとしてガイド兼車掌さんやってくれている富田美優さん演じる瑞季ちゃん。この子も作品内で聞き手であるあなたと初対面の関係性のキャラクターになります。『いやでんっ!』シリーズの他作品でも同じような立ち位置のキャラクターが出てくるのですが、その中で一番友人ポジションに近い立ち位置を取っている子である印象を受けます。

トラック1を聞いた人は初っ端からなんで初対面でこんなに親愛度高いんだ?と思われるかもしれないけど、そこはそういうもんかーで受け入れましょう。一応、旅の時系列が下っていくごとに親愛度が高まっている様子が感ぜられるので、なんか…すごいウマの合うガイドさんと旅人(あなた)だったんだと思います。語尾がだんだん砕けていったりするとことか…ほんま好きっすね。「動くと危ないからじっとしててね」とかそういうセリフの語尾のニュアンスというか、そういうところ、ほんま好きなんすよね。世が世なら今年一番好きなキャラクターまであるんだよな。

この作品は上期のおすすめ作品の中で一番キャラクターが好みの作品でもあります。友人のような安らぎ、少し依存性のある包容力…なんだか慈しまれているなあ…と癒やされるのも現代寺院にはまた必要なことだと思います。また、耳かきシーンでの吐息の感じが程よいです。吐息を収録するために、意識して呼気吸気を出しているなというような感じではなく、耳かきに集中するあまりに吐息が出ているな、という感じの吐息感があって好みの感じですね。吐息ついでに耳吹きシーンもめっちゃ良いということを重ねてお伝えします。

ちなみに、耳かきと鉄道旅って危なくない?と思われましょうが、耳かきするシーンでは駅にしばらく停車してしっかり安全性は確保しています。安心してください、停まってますよ。なんにせよおすすめ、ってことです。

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  • 【安眠特化23時間】鈴蘭の森と小鳥の羽休め~眠れるASMR/耳かき/安眠ラジオ/マッサージ~【完全新作4本立て/音だけトラック

自分ってどんな種類のASMR音声が好きなんだろう…?と思った人におすすめしたいのがこの作品。この作品の特徴はなんと言ってもボリューム。重複なしでの23時間というのは割ととんでもない話だと思います。というかこの収録時間ゆえに俺もまだ全部聞いていない、年単位で挑戦していく一作です。

耳かき音1つとっても、綿棒、ブラシ型、オイル耳かき、梵天などなど多種多様ですな。そして耳かきに留まらないASMR音が収録されています。マッサージ関係、マスキングテープなどのテープ関係、片栗粉やカラースプレーなどの粒・粉関係の音、着物着付け編は衣擦れ音を楽しめますし、美容液などの液体系の音も揃えております。ストーリーパート3時間以外に、これらの心地よい音を集めた時間帯が6時間。…えーっと、夜聴きはじめて朝日を迎えてませんか?そんなボリュームなんです。

そんな多種多様なASMR音の中で自分の一番のおすすめは食材・調理音。ストーリーパートで漬物を作るシーンがあるんですが、このシーンが本当に好き。

自分のASMR好きの入り口ってキューピー三分クッキングの木べらがバットに当たる音だと自覚しています。その故あって食材調理音は本当に好き。食材を切る音、まな板に包丁の柄が当たる音、生姜をすりおろす音…。いやー、流石に実績と信頼のASMRサークルのシロクマの嫁さんです。いい仕事してますねえ…。

 

さて、この作品をおすすめするにあたって一番ネックになるのが作品の価格。3,000円オーバーはアルバム1つ買うのと同じくらいなのよ。しかし冷静に考えてほしい。収録時間23時間はやはり凄まじいですよ。

これまで挙げてきた作品は千円台半ばのの価格帯ですが収録時間は2~3時間です。その10倍近いボリュームで値段は2~3倍っていうのはコスパという意味合いでは非常にお手頃。そういう事情もあって、値段の割にASMR入り口の人に自分の好みを把握するための一手として提案したいのがこの一作になります。

なにより…嬉しいじゃないっすか。この23時間というボリュームを小分けにするのではなく一作にどーんと打ち込むこの心意気が。聞き手だけじゃなく作り手もASMR好きなんだな、いい作品をこれからもお待ちしてます。そんな心境で渾身のおすすめです。

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  • 君とひと夏の思い出~海と花火とひざまくら~

DlsiteでASMR作品を購入するようになって、シリーズ推しとかサークル推しとかいろいろな購入基準があるのですが、その中で演じている人によって推しているものもあります。音だけではない音声作品なので。

それがこの作品を演じている一之瀬りとさんの作品ですね。この方が主催するサークルいちのやから配信されている作品になります。

なんと申しましょうか、ASMR音声作品で安眠しようとするときって、表現力や声色以外に声質とでもいうようなものが大変重要だと思っています。

自分は自分の安眠に最適な声質を「コルクのような」と表現して探しているんですが、一之瀬さんの声質がまさにそれですね。コルクのようなと表現するのは、湿気の少ない、乾いていてそれでいてひんやりとした…とでもいうか。これは本当に人に伝わるように表現するのが難しくて困ります。乾いていてひんやりとしたというのも主観でしか無いので、サンプル聞いてもらって「ああ、こいつはこういう声質で寝入るのか」と思ってもらうしか無いっすな。

さて、この作品のシチュエーションは久しぶりに帰省した故郷で幼馴染と過ごす夏休みです。幼馴染ということで砕けた口調で話しかけてくれる素朴な感じが…いいんだ。いいんだというか、自分が一番好きなタイプの安眠声質なので、私からしたら最高の領域です。

声質声質といっていましたが、素朴な、静かな表現力って意味では一之瀬さんのそれはかなり好ましく思うところがあります。かき氷を二人で食べているシーンでの「もう食べたの?早いね。ふふっ、ちょっとまって」ってセリフがあるんですが、この「ふふっ」のところ。文字にするほどしっかりと「ふふっ」って言っているわけではなくて、本当に素朴な「ふふっ」という息、セリフでもない感じのそういった一つ一つのニュアンスがホンマに好きですね。

このあたりはASMR音声作品特有の何かしらだと思います。ボイスドラマとかそういう作品内とはまた違う表現の仕方なんじゃないかな…と。ちょっとした笑い声とか相槌とかそういうところでのASMR音声作品的臨場感を出すのが上手だと思います。ちょっとした語尾の伸ばし方とかも心地よくて…。そういう意味でキャラクターという感じをこえた没入感を感じさせるまであって…っていう評価をすると「こいつ怖いな…」と思われそうでちょっと嫌なんだけど。そういう没入感が睡眠導入にめちゃくちゃ良いのかもしれない、って思う。うん。

 

この作品でたったひとつ物足りないところがあるとすれば自分が大好きな耳かきシーンがないところではあるんですが、その分、かき氷の音だったり海の波音、線香花火の音など夏らしい音が盛りだくさんなので。

音というと、このサークルの音では歩く時の砂利の音がめちゃくちゃ好きです。玉砂利っていうほどの音が出るわけじゃなくて、砂浜ほどキメの細かい音でもなくて、田んぼの畦道とか河原の散歩道みたいなちょっとした砂利道を歩いている時の音。ほんとこの音無限に聞いていられるわ…。大好きですね。この砂利音。しかも浴衣着てるシーンではその音に下駄の音が合わさって…あー、無限に寝入るわ、これ。無限に寝入るってどんな日本語だよ。ま、そのくらい好きな音ということです。

 

いちのや作品でこの砂利音を楽しめる作品としては昨年発売の『守り神とふたりぐらし。 ~ささやき、耳かき、添い寝と癒しのひととき~【フォーリー】』というのもあります。これは自分のオールタイムベストASMR作品の候補の1つでもあるくらい聴き倒した作品でもありますね。一之瀬さんの作品を追いかけ始めたきっかけでもあります。シチュエーションも込み込みでドチャクソ好きな作品なんですよね。

 

最後に話がそれましたが、冬の入りに夏の終りのASMR聞いてみませんか?というわけでおすすめです。

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  • 【耳かき・タップダンス】あやかし郷愁譚 ~赤い靴の少女 メリー~【靴磨き・フォーリー】

最後に再び紹介するのがあやかし郷愁譚シリーズの「赤い靴の少女 メリー編」です。わざわざ最後に紹介することからも察されるかもしれませんが、自分の中では上期ナンバーワンASMR作品です。

あやかし郷愁譚シリーズは高知を舞台にあやかしと人とが関わり合う物語。この作品でのあやかしは「赤い靴の少女」です。思い浮かぶでしょうか。あやかしとしての赤い靴の少女…。童謡『赤い靴』に登場する「異人さんに連れられた女の子」があやかしとして日本に帰ってきて高知に上陸する、そんなところから物語は始まります。ストーリーを一旦後回しにして、音声部分に注目していきましょう。

まず音なんですが、タイトルにもあるタップダンス、靴磨きからもわかるように靴周りの音に焦点を当てた作品になります。タップダンスシーンも良いのですが、その手前赤い靴の女の子を定義づけているその赤い靴が壊れてしまうシーンがあります。その修理シーンでの音が…めっちゃいい。靴底、ヒールチップをはめるシーンの木槌かトンカチの「コンコン」という音。これはねえ、レアな音だ…。しかもいい音です。自分ここ以外で聞いたことなかったですね。

靴を磨く「キュッキュッ」「ギュッギュ」という音もいいですし、シーンの合間合間で道具を取り出すために引き出しを開ける音とかそういう細やかな音作りがとても良い。靴周りっていう着目点は素晴らしいです。

声の部分では赤い靴の少女メリーを演じている奏谷しはるさんの声色。先程挙げた「コルクのような」に近い部分があって好きなんです。なんでしょうね、笑い声とか語尾にスタッカートのニュアンスがあるのが好きなんだろうか。この作品を買った時期に奏谷しはるさんの他の作品を買い漁っているので、やっぱり好きな声質であるのだと思います。

メリーについては時折挟まる英単語のセリフもASMR的に聞き心地が良い。日本語の中に交じる英単語って意味がすっと入ってこないって意味でASMR的効能があるのかしら。音・声ともにハイレベルに自分に刺さってきた作品でした。

 

そこから上期私的ナンバーワンを押し上げる要因はなにか?それはストーリーなんです。寝入るためのASMR作品でストーリーを重視するのか?と言われると答えに窮するところはあるのだけど。寝てねえじゃん、聞き入ってんじゃんって。

だけどこの作品はストーリーが刺さりまくってしまった。それは

赤い靴の少女・メリーというあやかしは「異人さんに連れられた赤い靴履いてた女の子」を由来にする女の子。モデルになった女の子は結核のため幼くしてなくなってしまったが、あの曲を聞いた当時の人々がその子の幸せを願ったが故に生まれたあやかし。ただ、「世界が小さく狭くなったせい」で、もう戻れ得ぬはるか遠くの見ず知らずの女の子の幸せを願う気持ちが現実味を失ってしまった。あの時代にメリーのことを歌ってくれた人々の抱いた切実な願い、同情が実感を持たなくなってしまう。そのために、メリーはどんどん薄れていってしまった。

あやかしは人に忘れられてしまうとその存在が弱くなってしまう。赤い靴が修理が必要になるシーンだってその伏線だった。赤い靴がダメージを負うようなことなど起こり得ないはずだった。そのくらいにメリーの実在は弱くなってしまっているということ。そもそも「米国で幸せに暮す少女」という願いが込められたメリーが日本に戻ってこられたことが赤い靴の少女を願う人々の気持ちが薄れたことの証左だった。

人々の優しさが生んだあやかしが、人類科学の発達にために、人々が幸せになったために実在を失ってしまう。優しさと幸福がぶつかって一人の人格が失われようとしている。それをそういう物語として受け取ることは可能だ。しかし、ここまで2時間、3時間メリーという人格とふれあった聞き手であるあなたはそれを許容できるだろうか。

ケラケラと年相応に笑う少女、赤い靴が修理されていく様に顔を綻ばせる少女、久しぶりの畳にはしゃぐ少女、風邪を引いたあなたを看病してくれる彼女。あやかしシリーズの中でもトップクラスに「人間らしい」あやかしである彼女を前に、彼女が消えていくことを見過ごすことが出来るだろうか。

 

寝入るために聞いていたはずなのに、気がつくとストーリーに聞き入ってしまっていた。感極まってしまっていた。そんなことがあっていいのか。悪いやつは一人もいないストーリーでこのままメリーを見送ってしまっていいのか。

ただ、救いはある。メリーがなぜ日本にもどってきたか。高知のこの地を統括しているご開祖ちゃんというあやかしのボス的存在曰く、この地で新たに人との関わりをつないでいけばあるいは…、ということらしい。そう、その一人目が聞き手のあなたなのだ。

ここまで聞いてきたあなたはわかるはずだ。高知のこの地ではあやかしと人とが混ざり合って生活をしていることを。日本各地で実在が薄れていっているあやかしが寄り添って生きているこの高知の『ものべの』でならメリーもその存在を繋いでいくことが出来るかもしれない。風邪で寝込んでいるあなたにその辺りの事情を話したメリーは寝息を立て始める。作品はそのメリーの寝息のループで幕を閉じる。

翌朝からメリーの高知での生活がスタートするのか、それとも起きたときにはもうメリーは…その辺りを聞き手のあなたに投げてフェードアウトしていきます。

 

…寝れるか!おい!寝られんのよ!それでは!上期ナンバーワン作品、ストーリーが良すぎて寝られませんでした、でそれでいいのか?俺の5選。

でも、この記事が多くの人に届いて…そしたらもしかしたらメリーの実在を支えてくれるんじゃないかなって思って、お蔵入りさせずにアップロードすることにします。

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そんなわけで2020年度上期のDLsiteASMR作品私的おすすめ5選でした。

みなさんも眠れない秋の夜長に…ASMR聞いてみませんか?物は試しに。自分は2020年の春くらいから睡眠の質がかつてないほどに良好になっております。…ASMRのおかげだけじゃないんだけど。それではまた。