今日、ふとツイッターをみていたら、小惑星探査機「はやぶさ2」の公式アカウントのツイートが目に止まった。
長い夜だねえ
— 小惑星探査機「はやぶさ2」 (@haya2_jaxa) 2020年9月16日
なんだかすごくジーンとくるものがあったので昨日からのツイートを遡って事情を把握していた。
小惑星リュウグウから試料を地球に持ち帰るというはやぶさ2のミッション。無事にサンプルを地球に届けるまでがミッションですが帰路についたのが昨年の11月。長い長い帰り道を10ヶ月にも渡って宇宙を進み続けていたはやぶさ2。
昨日から今日にかけてはその地球帰還軌道突入の微調整のためにイオンエンジンの最終稼働を行っているとのことです。
【イオンエンジン最終運転(TCM-0)】
— 小惑星探査機「はやぶさ2」 (@haya2_jaxa) 2020年9月16日
本日の運用を簡単に説明します。
本日は、地球帰還に向けた軌道の微修正(TCM)のためにイオンエンジンを運転しています。
イオンエンジンのリアルタイムの推力を見ながら、狙った軌道修正量になるタイミングを見計ってエンジンを停止させます。
(IES兄) pic.twitter.com/t74W5fIZNI
冒頭のツイート、『長い夜』と表現したのはこの後のイオンエンジンの停止タイミングがこの後の真夜中になることからと思われます。
【イオンエンジン最終運転(TCM-0)】
— 小惑星探査機「はやぶさ2」 (@haya2_jaxa) 2020年9月16日
現在のイオンエンジンの『暫定』停止時刻は 日本時間 03:03:36 です。
真夜中です。
この後、エンジン運転の結果を反映して軌道担当が停止時刻を修正します。
修正は何度か行う予定です。
できるだけリアルタイムで情報を発信します。
(IES兄)
この一連の状況を把握する前に冒頭のはやぶさ2のツイートがすごく胸に迫るものがあったのは何故だろう…といろいろ考えていた。
長い夜だねえ、というツイートを最初に見たときに自分は今も地球に向けて進んでいるはやぶさ2のことを思い浮かべました。はやぶさ2が呟いているような。
しかし『夜』という概念はいかにも地球、地上的な考え方だ。夜を辞書で引くと「日の入りから日の出までの間。太陽が地平線の下にあって暗い時。」というような定義が出てくる。その大きさや明るさ、その空間の温度が地球上とは違うとはいえ、太陽を遮るもの、太陽が沈んでいく先がまったくない宇宙空間というものは常時昼といえるのかもしれない。その宙空にあって「長い夜」という表現を用いるのだとしたら、はやぶさ2はどこまで行っても地球的なものの考え方をする子なのかもしれないな、と。
一方で、定義上では常時昼とはいえ、だだっ暗い宇宙空間を地球から出発してすでに5年半を超えて翔び続けているはやぶさ2。はやぶさ2の長い夜は今晩だけではなく、ずっと続いているのかもしれない。
はやぶさ2は小惑星探査機であってマシーンなので、こういう擬人化したような感情移入の方法は間違っているのかもしれないけど。ただまあ、大勢の人が想いや期待を込めて遥か彼方にかっ飛ばした探査機なので、こういう感情移入をする人間がいたっていいんじゃないかとひっそり応援しています。
長い夜ツイートで、ここ最近のはやぶさ2を調べていたんだけど、はやぶさ2の小惑星試料入カプセルの地球到着予定は12/6が予定とのこと。地球出発が2014年12月3日だから、ほぼ丸6年でのおつかいになる。今回は初代はやぶさと違って、はやぶさ2本体は地球の大気圏に突入する予定ではないので、カプセルの分離は12/5の日中。約12時間後に、こちらは初代はやぶさと同じくオーストラリアのウーメラ砂漠に落下するらしい。
(しかしこれ、カプセルが地球を空振ったらそのまま宇宙空間をさまようことになるんだろうか。発射角度とかタイミングとかがシビアなんだろうな…ハイレベルな世界だ。すごい。)
はやぶさ2はその後再び別の小惑星探査に向かうということです。
次の小惑星到着は2031年。再び長い夜に突入するであろう、はやぶさ2。12月5日、6日はそのはやぶさ2が地球の影に隠れて昼と夜という境目を経験することができるかもしれない。オーストラリア時間の夜に再突入するカプセルを撮影するということだから、地球の影に隠れるのだろうか。種子島か、もしくはリュウグウで見て以来の日の出を見て、ふたたび遥かなる旅路に旅立つはやぶさ2。
冬のその日には、長い夜から一瞬の昼を味わうはやぶさ2のことを想って空を見上げる、そんな時間を作ろうかなと思います。
それでは、長い夜を実際に戦っているJAXAの皆様。素人目線のはやぶさ2の1ファンではありますが、本日のイオンエンジン停止、地球帰還軌道への投入の第一段階が無事に進むことを祈っております。頑張ってください。
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