上記記事の続きになります。読んでない方向けに簡単なあらすじを↓に
初めてのテント泊山行の舞台として愛媛瓶ヶ森に向かう。前の山行の反省を活かしてパッキングや持っていく道具を工夫し楽しい山行、設営を行う。山の夜に気分が昂ったのか眠れない夜を過ごすが、ふと空を見上げてすばらしい星空などテント泊ならではの絶景を味わう。草木も眠る丑三つ時を経て、外に明かりを感じ出てみると、雲が晴れ月光があたりを照らしていた。なんだか勇気をもらい、日の出を見るべく瓶ヶ森山頂へと早朝アタックをしかけるのであった…。
ほとんど寝付けないままにテントの外に出て、月を見上げていると山裾が気持ち白くなっていることに気が付きました。
夏の日は早い。ここで眠れない…とやっていても仕方ないな、と思ってザックにレインウェアと水分、行動食など必要最低限のものを詰め込んで登山靴の紐を引き締め、山頂に向かって歩き出しました。
ここで今更ですが、瓶ヶ森の登山ルートについて説明しておこうと思います。
瓶ヶ森林道から車でやってきて駐車場に停めた場合、登山道に入ってすぐに男山、女山という表示があって分岐します。瓶ヶ森とは単一のピークを指すでのはなくこの二つのピークを指します。(最高峰は女山の1,897m)
今回はこの男山、女山の分岐で女山方向に進んでいきました。笹原を進んでしばらくすると、そこからさらに女山山頂と瓶ヶ森第一キャンプ場の分岐になります。なので、キャンプ場から女山山頂に至るには一旦この分岐から来た道を戻って、山頂への登山道に戻るような形になります。
キャンプ場で荷造りをして出発しましたが、周りはまだ寝静まっていて、山頂に向かう人はいないようでした。起こしてしまわないように静かにキャンプ場を抜け、女山山頂に向かう分岐にまで戻ってそこから先は一本道です。
ヘッドライトは一応持って行っておりましたが、歩き始めて10分もしないうちに必要ないくらいに空が明るくなってきました。時間は5時前くらいですね。
登山道は木の段が整備されていたり、しっかり踏み分けられていて道迷いの心配もないような気持のよい一本道でした。女山山頂への分岐を超えたらすぐに低木帯になり、眺望もすばらしく背後に石鎚山を背負いながらの登りです。
天気は良かったのですが、風が少しありまして、8月とはいいますが少し肌寒いくらい。しかしこの周りに誰もいない登りはすごく気持ちがよかった。
早朝に日の出を見るために登るという経験は、過去に富士山で二度したことがあります。しかしそのどちらも前後に人の行列ができているようなシチュエーションだったので、静かな朝の澄んだ空気の中、一人歩いていくというようなものではなかったんですね。富士山の人気を考えたら詮無き事ですが。
吹きすさぶ風の音を耳に、向かっていく山裾がだんだんとはっきり見えていく。視界の上にはっきりと映るというだけでなく、明けゆく東の空からの光を受けて、空の青、山の黒がはっきりと分かれていく……。やうやう白くなりゆく山際とはこういうものか、と実感しながら一歩一歩とあるいていました。
風の音と自分の呼吸音だけ聞きながら、ただ一人登っていくあの時間帯。いやー、楽しかったっすね。
ほどなく、男山から続く稜線が目線の高さにやってきて、女山のピークへと到達しました。時間にしてキャンプ場からは30分ほどの距離です。
第一キャンプ場から誰とも会うことはありませんでしたが、女山山頂には先客が二人おり、日の出をカメラに収めようと一眼を構えておりました。自分には一眼をうまく取り扱うようなスキルはないのですけど、例えば星空を綺麗に写すことのできる広角レンズとか、遠景を捉える望遠レンズなんかが欲しいなあと思うことはあります。ただ、自分もミラーレスですがカメラを持って上がっていたので、ザックを下ろして準備をしていました。
すると、先に三脚まで構えて待っていた人が「こちらどうぞ」と山頂から東に向かって構えることのできる場所の一角をあけてくれまして。お礼を言って、いそいそと準備をしていると、「今日はちょっと雲が多いですね。条件が良ければ徳島の方の山まで見られるんですが」と教えてくれました。徳島というと剣山が思い浮かびます。
確かに、結構雲が多い天候でしたが、まさに雲海というような風情があり、これはこれでよいものです。高山にまで来ないとみられないという意味では雲海って登山特有の風景ですしね。
しばらくすると、自分が通ってきた第一キャンプ場からの登山道からもう一人登ってきました。昨晩、「星が見えますね」と少し話をした隣のテントのおっちゃんでした。手にはカメラを持っていたので、やはり日の出を撮りにきたものと思われます。
おっちゃんの到着からほどなくして、日の出の時間。
山の上で日の出を見るのは二度目だったんですけど、ふと富士山山頂でご来光を見た時のことを思い出して、iPhoneにイヤホンをつないで音楽を再生しました。曲は『Twilight Sky』
4年前に富士山山頂でご来光を見た時も同じ曲をかけていましたね。
明けゆく東の空に流れる夢の続きが
たとえ違ったとしても君の歌聞かせて
4年前も、そしてこのときも「あー、今俺は世界で一番贅沢なトワスカを聴いてる」という実感を得ていたような気がします。
日が昇るとじわじわと温かくなってきます。ひとしきり山頂からの絶景を堪能した後、今来た道を戻ります。先客の二人とおっちゃんはそこから男山へと至る稜線の方向に進んでいっていたのですが、自分は寝ていないことによる体力面への不安からそのまま来た道を戻って撤収することを選択。
登山での怪我は下りで多いということに気を付けて、ゆっくりと登りと同じくらいの時間をかけて戻ります。
さて、キャンプ場まで戻ってくると、ほとんどの人はもう起きていて、朝ご飯の準備であったり、テントの撤収をしています。自分も羊羹とおにぎりで簡単に朝食を済ませると、いよいよ撤収の準備に入ります。
撤収と一言でいうと簡単ですが、これがなかなか……。
普段から片付けが苦手なのは自覚してるんですけど、よくぞ一晩でここまで散らかしたなという具合のテントの中を片付けることから始まって、もう一度ザックに入るくらいに綺麗に畳まないと入らないテントを相手に苦戦したり、畳む前のグラウンドシートが吹っ飛んでいったりと。ここが一番大変でした。時間にして50分ほどかかりました。かかりすぎなんですよね。
近くでカップルか夫婦かの二人組が二人で両端をもってテントなりフライシートなりを簡単に折りたたんでいるのを見たときは「人は一人では生きていけないのかもしれない」などということを思ったりもしました。(その後、一人で畳めたタイミングでそんな思いは霧散しましたが)
撤収はもっと練習しないといけないですね。手順を見直したりとかそういうことが必要です。
そういうわけで、なんとかザックに荷物を詰め込んだので来た道を戻って駐車場に帰ります。
日はもうすっかり高くなり、右手(西側)に石鎚山を望みながらの笹原歩き。四国の山特有のこの笹原歩きは何度やっても楽しいものです。
特に異常もなく無事駐車場に戻り、初のテント泊山行は無事に終わりました。
いやー、楽しいっすね…テント泊山行。四国の山で練習して、いつかは白山、立山に……それだけでなく、木曽駒ヶ岳とか燕岳だったり、九州に足を伸ばして中岳とかもいいな……そんな楽しみが湧いてきます。
最後に、いつもの木材画像と泰葉山頂ASRを添えて。
またどこかの山頂でお会いしましょう。