人生、東奔西走

自分の人生の備忘録のつもりで作りました。

十亀剣について

今朝のこと。

浅い眠りのために4時半前後に目が覚めて、うつらうつらと睡眠不足に対して半ギレになりながらツイッターでTLをさかのぼっていた。

なんだ…ライオンズアカウントのTLで早起きのファンが騒いでいる。

曰く「十亀剣、ライオンズに残留」とのことだった。

 

 

遡ること2年前。

こんな記事を書いていた。

keepbeats.hatenablog.com

 

去年はこんな記事を。

keepbeats.hatenablog.com

 

年は巡りて、いくつかの歓喜。いくつかの敗北。数多の出会いと別れを経て、2019年秋。

野上や浅村と決別をした季節。

おそらく多くの西武ファンが腹をくくり始める季節。

来ないなら来ないでいいんだストーブリーグ。そんな季節。

 

(そんな中、数年前の記事だがすごくライオンズファンの心情に訴えるブログがあったので紹介したい。ほんと心底気持ちがわかる)

64uni.blog41.fc2.com

 

 

ライオンズにおいて去就が懸念されていた選手は主に3名。

一人は今年の優勝の立役者、ザック・ニール。

そしてメジャー挑戦が噂されているキャプテン秋山翔吾

崩壊しかけのローテをついぞ守りきった2011年ドラフト1位十亀剣

 

ドラフト前夜、早々にニールの残留が球団から発表されたとき、西武ファンは湧いたものだが、まだ二人残っている。

予断を許さない状況が続いた。加熱する報道、揺れる人心。ふざけやがってふざけやがって。正直なところ、冷静ではなかった。

 

…俺は正直FA制度なんて嫌いだ。

いくら選手の権利といっても獲る側と獲られる側がこうも固定化している状況で、獲られる側のファンに負の感情をもつなというのは無理だ。人には内心の自由がある。

流出に歯をくいしばって耐えているファンに向かって、「選手の権利」「正当な評価」「素晴らしい環境」云々と正論を抜かしてくる他球団ファンにだって、全員一人残らずはっ倒してやりたいと思うことがある。そちらが好き勝手言うのなら、こちらも好き勝手言い返させてもらう。その先には何も残らないが、先に手を出してきたのはそちらだ。相応の報いを受けてもらおう。そういう感情になるくらいにはFAが嫌いだ。

中日大島が、楽天銀次が、DeNA伊藤が続々と残留を宣言している。それでいいのだ。もっというと福田も鈴木も残留すればいいと思っている。フランチャイズプレイヤー、その球団のファンに愛される選手というものが俺は好きだ。あくまで俺の感情だ。「俺」が勝手に各球団のフランチャイズプレイヤーを好きなのは俺の勝手だ。好きにさせろ。

俺の好きな各球団のフランチャイズプレイヤーを奪う制度、FA制度。俺がそれを嫌いで何が悪い。フランチャイズプレイヤーが好きになった理由?そんなもんうちから選手がどんどん出ていくからだよ。こと、FA移籍の悲哀についてはわかったようなことを言われるとカチンとくる。貴様に何がわかる、お前たちに何がわかる。普段言わないだけだよ。俺の秘密を教えよう。俺はいつもそういうことに怒っている。

 

 

話が逸れに逸れた。表題通り、十亀の話をしよう。

十亀剣の残留報道についてはサンスポの一報が胸を打った。

www.sanspo.com

十亀は「自分は渡辺GM(ゼネラルマネジャー)に取ってもらった。GMへの恩義と仁義で残留することにしました」と明かした。“宣言残留”については「その方がいいと思った」と説明。

 

聞きましたか、「恩義」と「仁義」ですって。

この時代にそんな行動原理を持って決断をくだしてくれる人間がいるとは…。

 

かつて、十亀と同じくFA宣言残留をした選手が二人いる。

栗山巧中村剛也だ。あの方たちについてはライオンズファンは足を向けて寝られないが、二人についてはそういう義理義理したものよりも、「ライオンズへの愛着」的な心情が強かったように思われる。

これも人の内心を勝手に予想しているわけだからなんとも不確かではあるんだけどね。でも、普段の言動を聞いているとどうもそう感じてしまうわけ。特に栗山さんについては。

その二人と比較して、十亀の残留要因「恩義と仁義」はなんとも硬っ苦しい。

でも、そういうものが現代にまだ機能していたのだと…すこし胸がすくような気持ちだ。口ではなんとでも言えると、斜に構えた方は思うかもしれない。

しかしまぁ、これまでFA宣言選手の「移籍前提ではない」「球団に愛着はある」「他球団の評価も聞いてみたい」そんな言葉を額面通りに受け取って「そうか、じゃあ残留あるな」と思って都度都度律儀に裏切られてきた西武ファンからすると、たまにはこの十亀の発言を四角四面に受け取って「そっかあー!!義なのか!お前さん義の男じゃったんか!」と胸にこみ上げる熱いもの堪えなくてもいいのかなという気持ちだ。

 

十亀剣の残留はライオンズにとって大きな意味をもつ。

過去、あの西口さんでさえ「FA宣言をしての残留」はしなかった。投手初のFA宣言残留、その前例を作ったこと。これは非常に大きい。端的に言うと勇気が湧いてくる。

来年の増田、更にその先の今井や髙橋光成、多和田や松本、平良やナベU、宮本くんに松岡くん、井上くん、上間くんたちについても、「FAを使っても残留してくれるかもしれない」という希望が湧いてくるのだ。

十亀に対して、しっかりと誠意ある交渉をしたナベQGMには本当に頭が上がらない。昨年にしたって交渉そのものについては問題なかったと思っています。GMに交渉事を任せて金だけだしている飯田常務、後藤オーナーについてもいい仕事してますね、と惨事を贈りたい。

 

十亀は今シーズン5勝6敗と負け越してこそいるものの、3シーズン連続での100イニングも投げてくれている。十亀剣がいなければV2はなかっただろう。そのくらいすれすれのローテ投手陣だった。

十亀自身も今シーズン、投球スタイルをモードチェンジし、さらなる高みへと進んでいる。この右腕はこれからもライオンズに勝利をもたらし続けてくれるだろう。ライオンズに手薄な中堅からベテラン寄りの投手として向こう3年は引っ張っていってくれると思う。

そういう意味で、十亀への3年総額3億という提示、決して高すぎるとは思わない。

これまでの貢献に対しての感謝、投手層の薄いライオンズのチーム事情、そしてなにより「てめえらうちの選手に手を出すんじゃねえ」という強い意志を感じた。

どこのどいつだ、ライオンズからFAしたら流出確定みたいに思っている奴らは、全員真剣十亀剣でたたっ斬ってやる。

 

 

しかしまぁ…別れの季節だとばかり思っていた秋にまさか「義」を以てライオンズに残ってくれる選手がいるとは思わなかった。

やっぱり俺の好きな球団って、結構素敵な球団なのかもしれない。

今年はそう思って生きていくことができる。ありがとう十亀。

十亀剣がライオンズの球団史に、ひとつのエポックメイキングとして名を残していく日が、今日この瞬間だったのかもしれない…。

神剣は錆びない、十亀剣。仁義で残留した男が神器に至るその日まで。

あれも、これも、叶えていけ。来年からも、ともに熱く、ともに強く。

 

101.6