人生、東奔西走

自分の人生の備忘録のつもりで作りました。

浅村栄斗について

2018年のプロ野球シーズン。
ライオンズを応援する上でよく口にしていた言葉が2つ。
一つは「共に戦う」ということ。5月のとある試合のヒロインで秋山翔吾が口にしたことばが由来です。
もう一つが「頂点へ狂い咲け」という言葉。8月にライオンズをコラボしてくれたバンドRoseliaのとある楽曲の一節から。(試合中のアナウンスでもこの言葉が出てきました)

頂点へ、昇り詰めようというのなら、ある種の狂気を孕んでいなければいけないということなのか。
ともかくも、その言葉を頼りに例年にはないような熱気をもって応援をし続けました。
そのあたりは過去の記事を適当に見てもらえればいいです。

 

そして、10年ぶりのパシフィック・リーグ優勝。この瞬間をどれほど待ちわびたことか。嬉しくて嬉しくて、本当にもう天にも昇る心地でした。

そして、再びやってくる最強のライバルとの決戦での敗北。
俺は、あの日の辻監督の涙を一生忘れない。あの日、ライオンズファンの心に去来した思いは来年以降を戦うなかで心に火を灯し続ける燃料になるだろう。


そこから、数週間。日本シリーズが、日米野球が終わり、シーズンオフがやってきて…
ストーブリーブという、ライオンズファンにとって忌むべき場外戦が始まります。

頂点へ狂い咲けと言うとき、そこには枕詞のように「何を失ってもいいから勝つ」とつけていたような気もします。まさかあのときは、こんなことになるとは思ってもなかったんです。

 

 


2018年、ライオンズを優勝に導いたキャプテン・浅村栄斗は東北楽天ゴールデンイーグルスに移籍することとなりました。
平成30年11月20日火曜。俺が見た第一報は共同通信のツイート。
消臭剤を買いに行こうと寄ったドン・キホーテの駐車場でスマホを見ていました。
最初に目に飛び込んできたのは、「ホークスに断りの連絡がはいる」というニュースでした。
「残留か、イーグルスかの二択か…。ホークスを蹴ったということは本当に残留の目はあるんじゃないかと」
その甘い考えが叩き潰されたのはほんの数分後。
ええ、この一週間。わずかに心が前向きになったのはたったの数分です。この数分だけなんだよ。
移籍するというニュースを見て。

怒りとかではなく、なんというかただただやるせないという気持ち。諦めともなんとも言えない気持ちがやってきました。

自分は11/7の記事でこう書いています。


総力で、西武ファンボンを打ちのめしにかかる戦いになる。西武ファンとしての自分を沈めこむための戦い。

 

(中略)


そして、今日、急遽その戦いに、浅村が援軍として現れてくれたわけだ。
「ライオンズを最優先に」という一言で、バーサーク化しかけていた、西武ファンとしての自分が落ち着きを取り戻す。ドラフトも終わって、もうこれで12月まで野球に関することで心を乱す必要はない。これまでもそうしていたとおり、ただ信じるだけ。
え?言葉をそのまま受け取るのかって?それが俺の生き方ですよ。いままでもそうして生きてきたし、これからもそうして生きていくだろう。それが俺の生き方。難儀な生き方だと思っていたけど、浅村がその生き方に報いるような言葉を発してくれたから、俺はこの週末、タカボンPとして所沢市上山口に行ける。


そこからわずか2週間。

腹をくくるタイミングはいくらでもあった。
ホークスが4年28億という条件提示をしたとき、バファローズとの交渉を事前に断ったとき、FA宣言をしたとき、CSファイナル敗退時の涙を見たとき、そもそも去年の複数年提示を蹴ったとき…etcetc

腹をくくってなかった俺が悪いのか、そもそも準備していたとて、これに耐えられる自信はなかった。
だから事前に決めておいたのだ、浅村が移籍しても、浅村に文句を言わないと。


去年の野上亮磨のときと事情が違うのは、今年ライオンズは優勝していたということ。そして、この優勝を牽引したのが浅村栄斗その人であったということ。
浅村栄斗がFA権取得のための期間の間に、ライオンズのためにならなかったシーズンというものが存在していないこと。
浅村が出ていくときは、ちゃんと送り出そうとそう思っていたんです。

 

 

FAは選手の権利?正当な権利なのだから、ファンは黙って見送れ?そんな言説が多く見られましたね。
ライオンズに問題があるのでは?東北楽天の方が魅力的だったんでしょ。そんな言葉をたくさん見ましたね。

そんなこと、こちとら百も承知なんじゃ!今更わかりきったことをぐだぐだぐだぐだと!
正論の剣で打ちひしがれている者たちを撫で斬りにするのはそりゃあ気持ちよかろうよ。ふざけるな!


流出した選手に対してブーイングするようなファンが居るチームは、出ていかれて当然だと!?そういう空気感が浅村が出ていくに至った直接の原因になっただと!?

あのな、人をばかにするのも大概にしろよ!そういうファンもいるだろう、その一方で、岸が帰ってきたときに、岸におかえりをプラカードを掲げた西武ファンの少年もいたんだぞ!歯を食いしばって、恨み言の一つでも言いたかろうが、じっと腕を組んで我慢してた三塁側のおっさんもいただろう!
そんなファンの一人ひとりのことは無視して、十把一絡げにして、ライオンズファンのせいだと?
いいよ、こっちも十把一絡げにどこそこのファンに総出で文句言われたとは言わねえ、そういうことを言うその一人ひとりに対して、それは違うと言ってやる。ふざけるな、心底ふざけるな。
腹の底から叫びましたよ。おかげで喉がいてえんだよこっちは。
わかんねえなら、言ってやる。浅村栄斗のことを誰よりも好きだったのは俺たちライオンズファンだ!そんなこともわからねえで、がたがた抜かしてんじゃねえ!ふざけやがって!

 

 

…結局、移籍についての謎は解けなかった。
野球選手としての成長を望むなら、日本一が目指せるホークス、低迷期の球団を変えるべく声をかけてくれたバファローズ、これらのチームと東北楽天との間にどういう差があったのか。
悩んでいたという期間と決断した理由の辻褄があっていないようにみえるんだよ…。
ただ、結局のところ、一ファンには憶測以上で語るすべを持たない。
だからそれはもう、浅村栄斗の言葉を信じて、納得するしかない。納得できないから、そういうことなんだなと理屈を記憶するしかない。

 


何度も言います。浅村栄斗は10年間。ライオンズのためによくやってくれました。
浅村栄斗が移籍したあとでも、彼の10年間のライオンズへの献身的なプレーが、消えるものだとは思っていません。かけらほども。
浅村がライオンズを最優先と言ったことも、俺は嘘だとは思ってません。
彼ならそう言うだろう。浅村栄斗とはそういうことを言ってしまうタイプの人間だ。
ホークスとの即日交渉で、何が話されたのか。
東北楽天との交渉の中で、どういう条件・状況が提示されたのか
それを受けて、バファローズとの交渉を断ったのはなぜなのか。
野球選手としての成長、それは再び試練を迎えるライオンズの中では得ることのできないものなのか。
それらすべてが憶測以上のもので語ることができない以上、各所で言われているようなタンパリングのようなものがあったとは思いません。というか、思いたくはありません。
もし、そういう行為があった場合。
2018年のあの血反吐を吐きながら走っていたシーズンのさなかに、キャプテンが同一リーグの他球団と交渉を持っていたということになります。

 

俺は、浅村栄斗がそんな卑劣漢だとは信じていない。
俺は、浅村栄斗がそんな不誠実な男ではないということを知っている。
俺は、浅村栄斗がそんな器用なことができない男だということを見てきた。

 

別に、東北楽天や石井GMの肩を持つために言ってるんじゃないから勘違いしてくれるな。おれは浅村栄斗にそういう不名誉を着せないために言っているんだ。
浅村栄斗はそんなことはしていないと俺たちライオンズファンが一番知ってるんだ。勘違いしてくれるな。本当に。

 


本当は俺だって、雄星がいなくなってCSファイナル敗退の原因である投手力が更に悪化する苦しい状況のライオンズからいなくなる浅村に恨み節の一つでも言いたいよ。
それでも、この前の11/7の記者会見のときの表情、言葉。今日の優勝パレード前の表情、ファン感謝祭の最中サインを求めるファンに対して書き続ける姿、あの表情。
それを見ていると、浅村の言葉には嘘はなかったと思う。あいつは本当に心底ライオンズと東北楽天との間で悩んでいたのだと。
その上で選んだ決断ならば、もう、それはもう仕方ない。
彼ほど愚直な男が、選んだ決断ならば、もう俺もその決断を受け入れていくしかねえ。
怪我を押して出場し続けた今シーズンの後半戦、延長線に入って気迫のヘッスラでもぎ取ったサヨナラ勝利、あの日ハム戦での逆転満塁弾…。
振り返れば、つくづく2018年の優勝には浅村が不可欠だったと思い知らされる。

 

今日のパレード、ファン感で多くのファンが浅村に声をかけてくれてたよな。
「キャプテン今までありがとう」と。
今日の浅村の姿を見てると、やっぱり浅村には感謝なんだよな。
浅村栄斗、いままでありがとう。その背番号3、よく似合ってたよ。俺はやっぱり君にはそのレジェンドブルーのユニフォームが似合うと思うんだけどな。
まぁ、ファッション感覚の押しつけはいけないけどね。

 

でもなあ、浅村。
「これからも野球をやめるわけではないので応援していただきたい」
すまないけども、この言葉に応えてやる訳にはいかない。もし浅村が別リーグに移籍する、メジャーに移籍するというのなら話は別だが、東北楽天とライオンズは来季も25試合を戦うのだ。打席にしたら100打席。
君は来年からそれだけの数、俺達の愛するライオンズの投手と戦うわけになる。
まあ、浅村ほどの打者なら結果を残すだろう。そういう相手に対して、俺は応援することはできない。
過去の貢献には感謝を、しかし明日からの君の貢献先は東北楽天になるんだろう。
埼玉西武ライオンズとは違うチームだ。俺は埼玉西武ライオンズのファンであるからして、多和田や今井くんや平井と対戦する浅村を応援することはできない。できないんだよ。
ライオンズファンからも東北楽天ファンからもその双方全員から応援してもらうことはできない。
そりゃあ、とくダネ!の小倉さんなんかは楽天のユニフォームを着ていても、岸や浅村は応援してしまうと言っていたし、あれほど魂のそこから青い血が流れている人がそういうんだから、そういう人も一定数いるだろう。
でも、一方でどうしても応援できないという人もいるんだ。悪いけど、おれはそういう側の人間なんだ。
俺は思想信条から来季メラドの東北楽天戦初戦でも、浅村へのブーイングは絶対にしない。それでも、浅村を応援することはできない。まあ、拍手くらいはするかもしれないが、それでも応援はできない。
そういうわけで、ライオンズユニを着た浅村の最後の願いをかなえることができない。

 

そのかわりにといってはなんだけど、俺も生き方を変えようと思うんだよ。
自分自身の人生に価値を見出さず、自分の信じるなにものかにすべてを賭けるという生き方。
でも、これって今回のようなことがあったときにリスクヘッジができてないんだよな。自分ではどうしようもないところに、自分の人生を預けていると、こういうときに打つべき防衛策がないんだよ。
だから、これからは俺ももう少し自分の人生の営みの中に、自分の人生の価値を見出していこうと思う。
山に登るのでもいいし、資格試験だったり、健康に気を遣ったりとかそういうんでいいんだけど、自分の手の届く範囲に価値を見つけていこうと思う。
浅村、君が自分の野球人生だから…と移籍を決断したのと、奇しくも同じかもしれない。
俺も自分の人生だから、自分の行動いかんでどうこうできる範囲の、自分に関わることにもう少し目を向けようと思う。
浅村、君の移籍が最後に俺にそういう影響を与えてくれたのだとしたら、それは俺にとってもすこしはいいことなんだろうか。

 


最後に、今回FA宣言後の交渉にあたった渡辺久信GM、球団本部長の飯田常務。
4年20億という条件はライオンズとして破格の条件であったし、他チームと比べて特段低評価ということもありませんでした。
それに、最後にもう一度交渉の席を用意したこと、ナベQGMの熱い説得に、自分個人としては納得しております。あれで出ていかれたら仕方ないよ。
願わくば、第二、第三の浅村を出さないことを。信頼関係は一年の交渉だけで決まるものではないと思います。森、山川、秋山、源田、外崎…、うちにはまだまだライオンズに残ってもらわないと困る人材がたくさんいるんです。
FA流出が多いことは悲しむべきことですが、FAを獲得して、他球団が這い寄ってくるような選手をたくさん輩出できるという前提条件そのものは、誇るべきライオンズのチーム力です。
あとは残せばいい。獅子の骨と牙や、西口さんという稀有な例もありましたが、第二、第三の西口文也栗山巧をこそ見せてください。
安心してグッズを買える選手、ライオンズファンの生き方を否定しない選手、次世代のそういう選手を見せてください。
そういう選手がいてくれたら、それこそ死ぬ気で応援しますから。エースもキャプテンも名捕手もいなくなって、チーム作り、大変でしょうけどご自愛ください。

 


はぁ…、今日辻監督も言っていたけど、来年からはあの浅村栄斗が敵になる。
いいんだよ、至極簡単なこと。勝てばいい。東北楽天に勝てばいいんだ。岸を持っていかれて、今年は浅村を持っていかれて、それでもなお勝てばいい。
浅村栄斗が敵になる、その事実を受け入れるための準備期間はもう始まっている。